古い一軒家に住んでいると、大きな地震が発生したときに「この家は倒壊しないだろうか」と心配になることがあります。特に築年数が長い木造住宅では、建築された年代、壁の配置、基礎、屋根の重さ、増改築、シロアリや腐朽など、複数の条件によって地震への強さが変わります。
ただし、家の耐震性能を正確に判定するには専門家による耐震診断が必要です。外観を見たり柱を揺らしたりするだけで「震度○まで大丈夫」と判断することはできません。自分で行うチェックは、あくまで専門診断を受けるべき住宅かどうかを考えるための入口として利用するのが安全です。
また、予算が限られている場合でも対策はできます。建物そのものの耐震改修だけでなく、家具の転倒防止、寝室の安全化、避難経路の確保などは比較的少ない費用から始められます。この記事では、古い木造一戸建てを想定し、自分で確認できるポイント、専門家へ相談する目安、費用を抑えて優先したい地震対策を順番に解説します。
- 最初に確認したいのは「いつ建てられた家か」
- 自分でできる簡易チェックは「危険箇所を見つける」ために行う
- チェック1:基礎に大きなひび割れや異常がないか
- チェック2:家が傾いているように感じないか
- チェック3:壁が少なすぎたり一方向に偏ったりしていないか
- チェック4:一階と二階のバランスを見る
- チェック5:増築や間取り変更を繰り返していないか
- チェック6:雨漏り・腐朽・シロアリの兆候がないか
- チェック7:屋根が重い住宅はそれだけで危険なのか
- チェック8:過去に大きな地震や水害を経験していないか
- 自分で壁へ筋交いや金物を追加するDIY補強はおすすめできない
- 低予算で最初にできるのは「家具による負傷」を減らすこと
- 寝室にはできるだけ背の高い家具を置かない
- L字金具・突っ張り棒は正しく使う
- テレビ・電子レンジ・大型家電も地震で動く
- 玄関と廊下を物で塞がない
- 窓ガラス周辺にも注意する
- 古いブロック塀も忘れずチェックする
- 耐震診断はいきなり高額な全面リフォームを意味しない
- 自治体の無料・低額耐震診断や補助金を先に調べる
- 専門家へ耐震診断を頼むと何を見るのか
- 費用を抑えた耐震改修は「弱点を狙って補強する」
- 耐震シェルターという選択肢もある
- 地震保険と耐震改修は役割が違う
- 具体例:築50年の木造2階建てなら何から始める?
- 具体例:1985年築なら耐震診断は不要?
- 具体例:予算がほとんどない場合の優先順位
- 避難用品も建物対策と同時に準備する
- 地震直後は自分で構造の安全を判断しない
- 古い家の耐震対策で避けたいこと
- 自分で確認する項目を一覧にすると分かりやすい
- まず今日できることを順番に実行する
- まとめ:古い一軒家はDIY補強より「簡易チェック→専門診断→必要箇所の補強」が基本
最初に確認したいのは「いつ建てられた家か」
古い住宅の耐震性を考えるとき、最初に確認したいのが建築時期です。日本の建築基準法における耐震基準は過去に改正されており、特に1981年6月1日は重要な目安になります。国土交通省も、昭和56年(1981年)以前に建築された建築物について、耐震診断・耐震改修を促進しています。[参照:国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」]
ただし「1981年以降だから安全」「1981年以前だから危険」と単純に二分できるわけではありません。木造住宅については2000年にも接合部、耐力壁の配置、地盤に応じた基礎などに関係する規定が明確化されています。そのため比較的新しい木造住宅でも、建築時期や仕様を確認する意味があります。
築年が分からない場合は、登記事項証明書、固定資産税関係書類、建築確認関係書類、設計図書などを確認します。中古住宅の場合は、過去の増築・改築履歴についても分かる範囲で整理しておきましょう。
自分でできる簡易チェックは「危険箇所を見つける」ために行う
自宅でできる耐震チェックの目的は、専門的な構造計算の代わりをすることではありません。「この家は専門家に詳しく見てもらったほうがよさそうだ」というサインを探すことです。
一般財団法人日本建築防災協会は、国土交通省住宅局監修の「誰でもできるわが家の耐震診断」を公開しています。木造住宅について、建築時期、災害歴、増築、傷み具合、建物形状、壁の配置、屋根などを確認できる内容です。自己判断だけで済ませず、このような公的・専門機関のチェック資料を利用するとよいでしょう。[参照:日本建築防災協会「誰でもできるわが家の耐震診断」]
特に1981年以前の木造住宅、増改築を繰り返している住宅、明らかな劣化が見られる住宅では、簡易チェックだけで安心せず専門的な耐震診断へ進むことが重要です。
チェック1:基礎に大きなひび割れや異常がないか
家の外周を歩き、目視できる範囲で基礎を確認します。ひび割れ、欠損、著しい劣化、不同沈下を疑わせる変形などがないかを見ます。
ただしコンクリートには乾燥収縮などによる細いひび割れが発生することもあり、ひびがあるだけで直ちに耐震性不足と判断することはできません。逆に見た目がきれいだから十分な耐震性能があるとも判断できません。
大きく開いたひび、段差を伴うひび、基礎の欠損、家全体の傾きなど気になる症状がある場合は、写真を撮って建築士などへ確認を依頼するのが安全です。床下へ無理に潜ったり、基礎を削ったりして確認する必要はありません。
チェック2:家が傾いているように感じないか
室内では、床が明らかに傾いているように感じる、特定の方向へ物が転がる、ドアや窓が以前より開閉しにくいなどの変化がないか確認します。
ただし建具の開閉不良は湿気や建具自体の変形でも起こります。ビー玉が転がったというだけで住宅の構造的な危険性を判定することもできません。正確な傾斜は専門的な測定が必要です。
複数の部屋で同じ方向への傾斜を感じる、基礎にも異常がある、柱や壁にも変形が見られる、といった複数の兆候が重なる場合は専門家へ相談する理由になります。
チェック3:壁が少なすぎたり一方向に偏ったりしていないか
木造住宅は、地震による横方向の力に抵抗するために耐力壁などが重要な役割を持っています。単に壁の総量だけでなく、建物全体にどのように配置されているかも重要です。
例えば一階の南側がほとんど大きな窓や掃き出し窓になっていて壁が少ない、店舗兼住宅で一階の大部分が大開口になっている、といった住宅では構造上のバランスを専門家に確認してもらう価値があります。
ただし室内から見える壁がすべて耐力壁というわけではありません。反対に一見普通の壁でも耐力壁として設計されていることがあります。壁を数えるだけで耐震性を判定することはできないため、図面が残っている場合は耐震診断時に用意しておきましょう。
チェック4:一階と二階のバランスを見る
二階建ての場合、一階と二階の形や壁の位置も確認します。二階の荷重を一階がどのように支えているかは耐震性を考えるうえで重要です。
例えば一階だけ大規模にリフォームして壁を取り払い、広いLDKへ変更している住宅では、その改修時に適切な構造補強が行われたか確認したいところです。
昔のリフォームについて図面や工事記録が残っているなら捨てずに保管しましょう。耐震診断を依頼するときに、元の間取りと現在の間取りが分かる資料は有用です。
チェック5:増築や間取り変更を繰り返していないか
古い一軒家では、長い年月の間に「台所を増築した」「和室二部屋を一部屋にした」「一階の壁を撤去した」といった改修が行われていることがあります。
増改築したから危険という意味ではありません。適切な設計・施工で補強されていれば問題のない場合もあります。しかし、どのような構造変更が行われたか分からない住宅では、現在の状態を専門家に確認してもらうことが重要です。
特に柱や壁を撤去した履歴がある場合は、「広くなったから」という見た目だけで判断せず、その際に梁や耐力壁などが適切に検討されたか確認したいところです。
チェック6:雨漏り・腐朽・シロアリの兆候がないか
耐震性能は新築時の設計だけでなく、現在の建物の状態にも左右されます。木造住宅では木材が腐ったりシロアリ被害を受けたりすると、構造部材や接合部の性能に影響する可能性があります。
雨漏り跡、床の異常な沈み、柱や土台周辺の腐朽、シロアリ被害と思われる痕跡など、目で確認できる異常がないかチェックしましょう。
ただし床下や屋根裏には危険があります。狭い床下へ無理に入る、電気配線の近くを触る、高所へ登るといった確認は避け、見えない部分は専門家へ任せるほうが安全です。
チェック7:屋根が重い住宅はそれだけで危険なのか
古い木造住宅では瓦屋根を見て「瓦だから地震に弱い」と心配することがあります。確かに建物上部が重くなると地震時の影響を受けるため、屋根の重さは耐震診断で考慮される要素です。
しかし瓦屋根であるという一点だけで危険と判断するのは適切ではありません。必要な壁量や接合部、基礎、建物全体の構造との組み合わせで判断する必要があります。
屋根を軽くする改修が耐震性向上につながる場合はありますが、屋根材の交換は費用も大きくなります。耐震診断をせずに「とりあえず瓦を全部軽い屋根へ交換する」と決めるより、住宅全体の弱点を調べてから優先順位を決めるほうが合理的です。
チェック8:過去に大きな地震や水害を経験していないか
日本建築防災協会の「誰でもできるわが家の耐震診断」でも、過去の災害経験は確認項目になっています。大地震、台風、水害、火災、車両の衝突などによって建物が被害を受け、その後十分な修復が行われていない可能性があるためです。[参照:日本建築防災協会「誰でもできるわが家の耐震診断」]
中古住宅で過去の状況が分からない場合は、家族、以前の所有者、売買時の資料などから分かる範囲で確認します。
大きな災害を経験していても適切に修復されている場合があります。重要なのは災害歴だけで危険と判断するのではなく、現在の構造状態と修復履歴を含めて評価することです。
自分で壁へ筋交いや金物を追加するDIY補強はおすすめできない
費用を抑えたいと考えると、ホームセンターで金物や木材を買い、柱へ筋交いを取り付ければ耐震補強できるのではないかと思うかもしれません。しかし構造部分のDIY補強は安易に行わないほうが安全です。
耐震補強は「強そうな金具をたくさん付ければよい」というものではありません。壁、柱、梁、土台、基礎、接合部が地震力をどのように伝えるかを考える必要があり、一部分だけを強くすると別の部分へ力が集中することもあります。
建物そのものを補強する工事は、耐震診断を行ったうえで建築士や耐震改修に詳しい施工業者へ相談するのが基本です。DIYで壁を剥がしたり柱・梁へ穴を開けたりすることは避けましょう。
低予算で最初にできるのは「家具による負傷」を減らすこと
建物そのものの耐震改修にはある程度の費用が必要ですが、室内の安全対策なら比較的少ない予算から始められます。大地震では家具の転倒、物の落下、ガラスの飛散などによって負傷したり、避難経路を塞がれたりする危険があります。
東京消防庁は家具類の転倒・落下・移動防止対策について、家具を固定することに加え、家具の配置を工夫することなどを案内しています。[参照:東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策」]
建物の耐震改修とは別の対策ですが、「今日から家族がけがをする可能性を下げる」という意味では非常に重要です。
寝室にはできるだけ背の高い家具を置かない
最優先で確認したい場所の一つが寝室です。睡眠中に地震が発生すると、とっさに家具を避けることができません。
可能ならベッドや布団の周囲から背の高い家具を移動します。移動できない場合は、家具が倒れたときに寝ている場所へ直撃しない向きへ変更し、適切な転倒防止器具による固定も検討します。
家具を固定する場合は、壁の下地や家具の構造に適した方法を選ぶ必要があります。石こうボードの表面だけへ適当にビスを打っても十分な固定力が得られないことがあるため、製品説明に従い、分からなければ施工できる業者へ相談しましょう。
L字金具・突っ張り棒は正しく使う
家具転倒防止用品にはL字金具、ベルト、ストッパー、ポール式器具などがあります。一般に壁へ適切に固定できるL字金具などは有効な方法ですが、賃貸や壁構造によって施工できない場合があります。
突っ張り棒を使用する場合も、単に家具の上へ一本置けばよいわけではありません。天井側に十分な強度があるか、家具の適切な位置へ設置されているかを確認し、製品の説明書どおりに使用する必要があります。
家具下部のストッパーと上部のポール式器具を組み合わせるなど、複数の対策が推奨されるケースもあります。設置方法は家具・器具によって異なるため、各製品の適用条件を確認してください。
テレビ・電子レンジ・大型家電も地震で動く
家具だけでなく、テレビや電子レンジなど重量のある家電も地震時には転倒・移動する可能性があります。特に高い位置へ置いた重量物は危険です。
テレビは適切な転倒防止ベルトなどを使用し、電子レンジなどもメーカーが指定する転倒・落下対策がある場合はそれに従います。
食器棚の扉には地震時に開きにくくする器具を付ける方法もあります。重い食器や瓶類はできるだけ低い位置へ収納すると、落下時の危険を減らせます。
玄関と廊下を物で塞がない
地震対策では「家具が倒れないこと」だけでなく「倒れても逃げ道を塞がないこと」が重要です。
玄関、廊下、寝室から出口までの通路に背の高い棚を置いている場合、転倒方向を確認します。棚が倒れるとドアが開かなくなる配置なら、家具を移動するだけでも安全性を改善できます。
これは工具も工事費も必要ない対策です。低予算でできる地震対策として、まず家族全員の寝る場所から玄関まで実際に歩き、何が倒れると通れなくなるか確認してみましょう。
窓ガラス周辺にも注意する
大きな窓の近くにベッドや椅子がある場合、ガラス破損時の危険も考えます。家具配置を変えて窓から距離を取るだけでも対策になります。
飛散防止フィルムを利用する方法もありますが、ガラスの種類によって使用できるフィルムや施工条件が異なります。特に複層ガラスや網入りガラスなどでは熱割れへの配慮が必要な場合があるため、ガラス・フィルムメーカーの適合情報を確認してください。
カーテンを閉めて就寝することも飛散したガラスが室内へ広がるのを多少抑える補助になりますが、耐震改修や適切な飛散防止措置の代わりになるものではありません。
古いブロック塀も忘れずチェックする
一軒家では建物だけでなく敷地周囲のブロック塀にも注意が必要です。国土交通省は、ブロック塀について所有者自身による安全点検のチェックポイントを公開しています。高さ、厚さ、控え壁、基礎、傾き・ひび割れなどが確認項目です。[参照:国土交通省「ブロック塀等の安全対策について」]
道路や通学路に面した古い塀が倒壊すると、自宅の住人だけでなく通行人へ被害を与える可能性があります。
明らかな傾き、大きなひび、ぐらつきなどがある場合は、自分で補修材を塗って済ませるのではなく、専門家へ安全性を確認してもらいましょう。
耐震診断はいきなり高額な全面リフォームを意味しない
「耐震診断を頼むと、そのまま何百万円ものリフォームを勧められそう」と心配する人もいます。しかし耐震診断と耐震改修工事は分けて考えることができます。
まず診断によって、住宅のどこが弱いのか、どの程度の補強が必要なのかを把握します。その結果をもとに予算と優先順位を考えればよく、必ずしも最初から家全体を大規模改修する必要があるとは限りません。
自治体によっては耐震診断や耐震改修に補助制度を設けています。特に旧耐震基準の木造住宅などを対象とした制度があるため、住んでいる市区町村の建築・住宅・防災担当窓口で確認するとよいでしょう。
自治体の無料・低額耐震診断や補助金を先に調べる
費用を抑えたい場合に非常に重要なのが自治体制度です。耐震化支援の内容は全国一律ではなく、対象となる建築時期、構造、所有者の条件、補助額、申請時期などが自治体ごとに異なります。
検索するときは「○○市 木造住宅 耐震診断 補助」「○○県 耐震改修 補助」など、居住自治体名を入れて公式サイトを確認します。国土交通省も住宅・建築物の耐震化促進について情報を公開しています。[参照:国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」]
補助制度を使う場合、工事契約や着工より前に申請が必要なケースがあります。先に業者へ工事を依頼してしまうと対象外になることもあるため、必ず自治体へ確認してから進めましょう。
専門家へ耐震診断を頼むと何を見るのか
木造住宅の耐震診断では、建物の形状、壁の量と配置、接合部、劣化状況、基礎などを確認し、住宅の地震に対する性能を評価します。
一般財団法人日本建築防災協会では、木造住宅について「一般診断法」や「精密診断法」などを含む耐震診断・補強方法を示しています。[参照:日本建築防災協会「木造住宅の耐震診断と補強方法」]
専門診断を受けることで、「壁を増やすべきなのか」「接合部を補強するのか」「基礎を補修するのか」といった優先順位を、見た目だけではなく構造的な根拠をもとに検討できるようになります。
費用を抑えた耐震改修は「弱点を狙って補強する」
診断の結果によっては、耐力壁の追加・補強、柱と梁・土台の接合部補強、基礎の補修などを組み合わせることがあります。どの工事が必要かは住宅ごとに異なります。
例えば建物全体を新築同様にリフォームするのではなく、耐震上重要な壁を選んで補強することで、内装解体を必要最小限に抑えられるケースがあります。
ただし「一番安い補強方法」を住宅を見る前から決めることはできません。低予算化のポイントはDIYすることではなく、診断によって弱点を特定し、必要な場所へ予算を集中させることです。
耐震シェルターという選択肢もある
住宅全体の耐震改修費を用意するのが難しい場合、自治体によっては耐震シェルターや防災ベッドなどへの助成制度を用意していることがあります。
これは建物全体を倒壊しないようにする耐震改修とは異なり、万一住宅が大きく損傷した際にも特定の空間を確保し、生命を守ることを目的とする考え方です。
高齢者がいる住宅などで採用されることがありますが、対象製品や助成条件は自治体によって異なります。導入を検討する場合は自治体の制度と、製品の公的な評価・仕様を確認しましょう。
地震保険と耐震改修は役割が違う
地震への備えとして地震保険もありますが、保険へ加入することと建物の安全性を高めることは別の対策です。
地震保険は被災後の生活再建を支えるための仕組みであり、加入したから住宅が倒壊しにくくなるわけではありません。一方、耐震改修は地震時の建物被害や倒壊リスクを低減するための対策です。
「命を守るための建物・室内対策」と「被災後の経済的な備え」の両方を分けて考えると、必要な対策を整理しやすくなります。
具体例:築50年の木造2階建てなら何から始める?
例えば1970年代に建てられた木造二階建て住宅で、これまで大規模な耐震改修をしていないとします。この場合は1981年以前の建物に該当するため、まず自治体の耐震診断支援制度を調べる優先度が高いと考えられます。
同時に自宅では、基礎の目視確認、雨漏り・腐朽・シロアリ被害の兆候、過去の増改築、壁が極端に少ない部分などを確認し、日本建築防災協会の「誰でもできるわが家の耐震診断」を利用します。[参照:日本建築防災協会「誰でもできるわが家の耐震診断」]
そして診断結果が出るまで何もしないのではなく、寝室のタンスを移動・固定し、テレビや食器棚の転倒防止を行い、玄関までの避難経路から倒れやすい家具を除きます。この順番なら大規模な工事費を用意できていなくても安全対策を開始できます。
具体例:1985年築なら耐震診断は不要?
1985年築であれば1981年の新耐震基準導入後ですが、それだけで現在の耐震性能を保証できるわけではありません。建築後40年以上経過していれば、劣化、増改築、維持管理状況なども考える必要があります。
例えば過去に一階の壁を大幅に撤去してLDKへ変更していたり、長期間雨漏りが続いていたりするなら、建築年代だけを根拠に安心するのは避けたほうがよいでしょう。
「新耐震だから診断する意味がない」のではなく、建築年代を一つの情報として、現在の住宅の状態を含めて判断することが大切です。
具体例:予算がほとんどない場合の優先順位
まとまった耐震改修費をすぐ用意できない場合は、まず費用をほとんどかけずにできる家具配置の変更から始めます。寝ている場所へ倒れる家具を移動し、玄関までの通路を確保します。
次に数千円程度から購入できる転倒防止用品などを、製品の説明に従って適切に設置します。食器棚の開放防止、テレビの転倒対策なども検討します。
そのうえで自治体へ連絡し、耐震診断の補助・派遣制度がないか確認します。「お金がないから診断もしない」ではなく、まず補助制度が使えないか調べることが重要です。
避難用品も建物対策と同時に準備する
住宅の耐震性を高めても、大規模地震では停電、断水、通信障害などが起こる可能性があります。家具対策と並行して、飲料水、食料、携帯トイレ、懐中電灯、モバイルバッテリー、常用している物品などを準備しておきましょう。
非常用品は一か所だけでなく、住宅の状況に応じて取り出しやすい場所へ置きます。倒れた家具の奥に防災用品があると取り出せなくなる可能性があります。
ハザードマップ、指定避難所、家族との連絡方法も確認しておけば、耐震対策を「建物だけの問題」にせず総合的な防災へつなげられます。
地震直後は自分で構造の安全を判断しない
大きな地震の後に柱や壁へ亀裂が入った場合、「まだ立っているから大丈夫」と自己判断して建物へ留まり続けるのは危険です。余震で被害が拡大する可能性があります。
建物が大きく傾いた、柱・梁・基礎などに明らかな損傷がある、異常な音がするなど危険を感じる場合は、安全を優先して建物から離れます。自治体や専門家による案内に従ってください。
ガス臭がする場合や電気設備が損傷している場合も、火災・爆発・感電の危険があります。損傷した設備を自分で修理しようとせず、必要に応じて消防・ガス会社・電力会社などへ連絡します。
古い家の耐震対策で避けたいこと
不安になると、すぐに高額な工事を契約したり、反対にDIYだけですべて解決しようとしたりしがちです。どちらも避けたいところです。
- 外観だけで「絶対に倒れない」と判断する
- 築年だけで安全・危険を断定する
- 構造計画なしにDIYで筋交いや金物を追加する
- 柱・梁・耐力壁を自己判断で撤去する
- 耐震診断前に高額な耐震工事を即決する
- 自治体の補助制度を確認する前に着工する
- 屋根が重いという理由だけで全面葺き替えを決める
- 建物だけ補強して家具転倒対策をしない
特に訪問営業などで「このままでは次の地震で必ず倒れる」と不安をあおられても、その場で高額契約を急ぐ必要はありません。自治体窓口や建築士など第三者にも相談し、診断根拠と工事内容を確認してから判断しましょう。
自分で確認する項目を一覧にすると分かりやすい
| 確認項目 | 自分で確認できること | 気になる場合の対応 |
|---|---|---|
| 建築年代 | 1981年以前か、2000年以前かなど | 自治体の耐震診断制度を確認 |
| 基礎 | 大きなひび、欠損、変形 | 建築士などへ相談 |
| 壁 | 極端に壁が少ない面がないか | 図面を用意して耐震診断 |
| 増改築 | 壁・柱を撤去した履歴など | 工事記録を確認 |
| 劣化 | 雨漏り、腐朽、シロアリの兆候 | 専門家による点検 |
| 家具 | 寝床へ倒れる家具がないか | 移動・適切な器具で固定 |
| 避難経路 | 家具が倒れると玄関を塞がないか | 家具配置を変更 |
| ブロック塀 | 傾き、ひび割れなど | 専門家へ安全確認 |
この一覧は耐震性能を判定する表ではありません。気になる部分を洗い出し、専門診断へつなげるためのチェックリストとして使います。
まず今日できることを順番に実行する
耐震対策は「大規模リフォームをするか、何もしないか」の二択ではありません。費用をかけずにできることから専門的な耐震改修まで、段階的に進められます。
- 家が建てられた年代を確認する
- 日本建築防災協会の簡易耐震診断を行う
- 基礎・外壁・雨漏り・増改築履歴などを確認する
- 寝室から危険な家具を移動する
- 家具・家電を適切に固定する
- 玄関までの避難経路を確保する
- 自治体の耐震診断・改修補助制度を調べる
- 必要に応じて建築士などによる耐震診断を受ける
- 診断結果をもとに優先度の高い部分から補強する
特に古い住宅では、最初からリフォーム会社へ「全面改修はいくらですか」と聞くより、耐震診断によって弱点を把握してから予算を組むほうが合理的です。
まとめ:古い一軒家はDIY補強より「簡易チェック→専門診断→必要箇所の補強」が基本
古い一軒家の耐震性が心配な場合、まず確認したいのは建築年代です。特に1981年以前に建てられた住宅は旧耐震基準の時期に該当するため、耐震診断を積極的に検討したい住宅です。ただし建築年代だけで実際の安全性を断定することはできません。[参照:国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」]
自分でできるチェックとしては、基礎の異常、建物の傾きを疑わせる症状、壁の偏り、増改築歴、雨漏り、腐朽、シロアリ被害の兆候、過去の災害歴などがあります。日本建築防災協会が公開している「誰でもできるわが家の耐震診断」を利用すれば、確認すべき項目を体系的に整理できます。[参照:日本建築防災協会「誰でもできるわが家の耐震診断」]
一方、費用を抑えるために自分で柱へ金具を取り付けたり、筋交いを追加したりすることはおすすめできません。建物の耐震補強は全体の力の流れを考える必要があるため、診断に基づいて建築士や専門業者と補強方法を決めることが重要です。
まとまった工事費をすぐ用意できなくても、家具の転倒防止、寝室から背の高い家具を移す、テレビや家電を固定する、玄関までの避難経路を確保するといった対策はすぐ始められます。東京消防庁も家具類の転倒・落下・移動防止対策を案内しています。[参照:東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策」]
費用を抑えるうえで最も大切なのは、補強を省略することではなく「どこが弱いかを先に調べ、必要な場所へ予算を集中させること」です。まず建築年代と住宅の状態を確認し、自治体の耐震診断・耐震改修補助制度を調べ、利用できる制度があれば申請条件を確認したうえで専門診断へ進むとよいでしょう。大規模リフォームを決断する前でも、できる地震対策は数多くあります。


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