古い家を解体するときに気になるのが、「更地にすると固定資産税が6倍になる」という話です。実際、日本の固定資産税には住宅が建っている土地の税負担を軽くする「住宅用地の課税標準の特例」があり、建物を取り壊して住宅用地ではなくなると、この特例が適用されなくなる場合があります。
ただし、「家を解体した翌年から実際に支払う固定資産税額が必ず6倍になる」という意味ではありません。6分の1という数字は主に200平方メートルまでの小規模住宅用地に適用される固定資産税の課税標準の特例率から来ています。土地の広さや利用状況、評価額、負担調整措置、都市計画税の有無などによって実際の税額は変わります。
「更地にすると固定資産税が6倍」の意味
住宅が建っている土地には、一定の要件を満たすと住宅用地特例が適用されます。国土交通省が案内している制度では、住宅1戸につき200平方メートルまでの小規模住宅用地について、固定資産税の課税標準は土地価格の6分の1となります。200平方メートルを超える一般住宅用地については3分の1です。
つまり「6倍」という表現は、住宅用地だった土地を更地にすることで小規模住宅用地の「6分の1」という特例を受けられなくなることから広まったものと考えると分かりやすいでしょう。税額そのものが機械的に6倍になる制度ではなく、課税標準を6分の1とする特例がなくなるという話です。
固定資産税の標準税率は1.4%ですが、実際の計算では評価額や課税標準額、負担調整措置などが関係します。そのため、解体前の税額に単純に6を掛ければ解体後の税額になるとは限りません。制度については国土交通省の土地の保有に係る税制でも確認できます。[参照]
200平方メートルを境に軽減率が違う
住宅用地特例を理解するときに重要なのが200平方メートルという基準です。一戸の住宅用地の場合、200平方メートルまでの部分と、それを超える部分では固定資産税の扱いが異なります。
| 住宅用地の区分 | 対象となる部分 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 |
|---|---|---|---|
| 小規模住宅用地 | 住宅1戸につき200㎡まで | 価格×1/6 | 価格×1/3 |
| 一般住宅用地 | 200㎡を超える部分 | 価格×1/3 | 価格×2/3 |
例えば、一戸建てが建っている300平方メートルの住宅用地であれば、原則として200平方メートルまでが小規模住宅用地、残り100平方メートルが一般住宅用地という考え方になります。300平方メートル全部が6分の1になるわけではありません。
なお、住宅用地として特例対象になる土地の範囲には、住宅の床面積との関係など別の条件もあります。自治体の案内では、専用住宅の場合でも原則として家屋の床面積の10倍までが住宅用地の範囲とされています。そのため、非常に広い敷地では土地全体が住宅用地特例の対象にならないケースもあります。
家を壊して更地にするとどうなる?
固定資産税は原則として毎年1月1日時点の土地や家屋の状況を基準として課税されます。住宅を取り壊し、1月1日時点で住宅の敷地ではなくなっている場合、原則としてその土地について住宅用地特例を受けられなくなる可能性があります。
例えば、長年住んでいた戸建住宅を解体して駐車場や空き地にした場合、土地そのものがなくなるわけではないため土地の固定資産税は引き続き発生します。一方、住宅という家屋がなくなるので家屋に対する固定資産税はなくなります。そのため、土地の税金が増える一方で建物分の固定資産税はなくなるという点も含めて考える必要があります。
また、住宅が残っていればどのような状態でも住宅用地特例を維持できるとは限りません。管理不全空家や特定空家として市区町村から勧告を受けた場合などには、住宅が存在していても住宅用地特例の対象外となる制度があります。国土交通省も空き家対策の案内でこの仕組みを説明しています。[参照]
広い土地ほど固定資産税が割安になるのか
「広大な土地なら面積が広いほど固定資産税の単価が自動的に安くなる」という単純な制度ではありません。固定資産税の基礎になる土地の評価額は、所在地、地目、形状、道路との関係、利用状況などを踏まえて評価されます。
住宅用地の場合には、前述したように住宅1戸につき200平方メートルまでの部分と、それを超える部分で特例率が違います。そのため、一戸の住宅が建つ非常に広い土地について「全部が6分の1になる」と考えるのは適切ではありません。
また、住宅用地として扱える範囲には原則として家屋の床面積の10倍までという上限があります。例えば床面積100平方メートルの専用住宅に数千平方メートルもの土地が付いている場合、土地全体が住宅用地として扱われるとは限りません。土地が広いこと自体を理由に一律で固定資産税が割安になるわけではないと理解しておくのがよいでしょう。
「貸土地」の看板がある土地は税金が安いとは限らない
街中で大きな更地に「貸土地」「事業用地」などの看板が設置されていることがあります。しかし、貸し出しているという理由だけで住宅用地特例が適用されるわけではありません。固定資産税では土地が実際にどのように利用されているかが重要です。
住宅の敷地ではない更地や事業用地などは、基本的に小規模住宅用地の6分の1特例の対象ではありません。そのため、土地の評価額が高く、面積も非常に広ければ、年間の固定資産税がかなり大きな金額になることは十分に考えられます。
一方で「面積×近隣の土地価格×1.4%」だけで税額を正確に推測することもできません。固定資産税評価額と実際の売買価格は別物であり、宅地等には負担調整措置などもあるためです。土地ごとの正確な税額については、その土地が所在する市区町村の固定資産税担当窓口や納税通知書・課税明細書で確認する必要があります。
都市計画税も一緒に確認しておきたい
市街化区域などでは、固定資産税とは別に都市計画税が課税される場合があります。住宅用地特例は都市計画税にもありますが、軽減割合は固定資産税と同じではありません。
小規模住宅用地では都市計画税の課税標準が価格の3分の1、一般住宅用地では3分の2となります。そのため住宅を解体した際の負担増を検討するときには、固定資産税だけでなく都市計画税についても確認したほうが正確です。
なお、都市計画税が課税される地域や実際の税率は所在地によって確認が必要です。「更地にしたら年間いくら増えるのか」を判断したい場合には、固定資産税と都市計画税をセットで試算するとよいでしょう。
解体前に固定資産税を試算しておく
古家を解体する予定がある場合は、解体費用だけでなく解体後の土地にかかる税負担も事前に確認しておくことが大切です。特に売却まで長期間かかりそうな土地では、住宅用地特例がなくなった状態で何年も土地を所有する可能性があります。
具体的には、現在届いている固定資産税・都市計画税の課税明細書を確認し、土地の評価額、課税標準額、住宅用地の区分を把握します。そのうえで市区町村の資産税担当部署へ「建物を取り壊した場合、翌年度の土地の税額は概算でどの程度になるか」と相談すると判断材料になります。
土地の所在地や利用状況によって条件が変わるため、不動産会社の売却査定だけで税額を判断するのではなく、最終的には課税する市区町村へ確認するのが確実です。
まとめ:更地で「必ず6倍」ではなく住宅用地特例が外れることがポイント
「更地にすると固定資産税が6倍になる」という話は、住宅1戸につき200平方メートルまでの小規模住宅用地について、固定資産税の課税標準を価格の6分の1とする特例があることに由来します。住宅を解体して住宅用地ではなくなると原則としてこの特例が適用されなくなるため、土地の固定資産税負担が大きく増える可能性があります。
一方で、実際に納める固定資産税額が必ず従来の6倍になるわけではありません。200平方メートルを超える部分では特例率が異なるほか、土地の評価額、負担調整措置、家屋分の固定資産税がなくなること、都市計画税なども関係します。
また、広い土地だから一律に割安になるわけでもありません。住宅用地特例には面積区分や住宅戸数、家屋の床面積との関係などの条件があります。古家を解体して更地にするか、売却するか、別の用途で活用するかを検討している場合は、解体前に所在地の市区町村へ翌年度の税負担を確認してから判断するのが安全です。


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