電話をきっかけに投資用マンションなどの不動産投資を勧められ、何度も面談するうちに申込書へサインしてしまった、断っているのに話を進められている、といったトラブルがあります。特に注意したいのが、申込書にサインしたからといって、断るために新たな契約を結ぶ必要があるとは限らないという点です。
不動産取引は金額が大きく、売買契約やローン契約まで進んでから解決しようとすると問題が複雑になります。契約する意思がない場合は、相手を納得させようと何度も面談するより、契約手続きを止め、現在どの段階まで進んでいるのかを書類で確認することが重要です。
不動産投資を断るのに営業担当者の「承諾」は必要なのか
不動産投資の勧誘では、断る理由を伝えると、その理由を一つずつ解消する形で営業を続けられることがあります。例えば「価格が高い」と言えば値引きを提示され、「自己資金が不安」と言えば負担を減らす提案をされる、といったケースです。
しかし、購入したくないのであれば、営業担当者を納得させられる理由を用意することよりも、「契約する意思はありません。今後の勧誘も希望しません」と意思を明確にすることが大切です。国民生活センターも、投資用マンションについて、興味がなければきっぱり断り、契約する意思がなければ事業者と会わないよう案内しています。
また、国民生活センターによると、宅地建物取引業者によるマンション販売では、契約しないことや今後の勧誘を希望しないことを意思表示したにもかかわらず勧誘を続ける再勧誘は禁止されています。威迫したり、長時間の勧誘などによって相手を困らせたりする行為についても規制があります。[参照]
「一度契約してからクーリングオフ」は避けたほうがよい
断りにくい状況になると、「とりあえず契約して、あとからクーリングオフすればよい」と考えてしまうことがあります。しかし、これは安全な方法とはいえません。
宅地建物取引業法上のクーリングオフは、すべての不動産契約で無条件に利用できる制度ではありません。国土交通省の解釈では、宅建業者が自ら売主となる宅地・建物の売買であることなどが前提となり、契約した場所などによっても適用の可否が変わります。宅建業者が単に仲介・媒介している取引などは同制度の対象にならない場合があります。[参照]
国民生活センターも、一定の条件を満たす場合には8日間のクーリングオフが可能と説明していますが、実際に対象になるかどうかは個別の契約状況によります。そのため、契約したくないのであれば、クーリングオフを前提として契約するのではなく、契約前に手続きを止めることが基本です。
申込書にサイン済みなら最初に「何の書類か」を確認する
「申込書にサインした」という場合、まず確認したいのは、その書類の正式名称と内容です。「購入申込書」「買付証明書」「売買契約書」「ローン関係書類」など、不動産取引では複数の書類が登場するため、単にサインしたという情報だけでは法的な状態を判断できません。
手元に控えがある場合は、書類名、売主・仲介会社、物件、金額、申込金・手付金、キャンセルに関する記載などを確認します。控えを受け取っていない場合には、サインした書類一式の写しを求めておくとよいでしょう。
例えば、購入申込みをしただけなのか、すでに売買契約を締結しているのかでは対応が大きく異なります。銀行のローン審査を申し込んでいる場合も含め、「現在どの契約が成立していて、どの手続きが申込みの段階なのか」を整理することが最優先です。
断りたいのに翌日の面談を求められた場合
すでに何度も対面しており、会うたびに断り切れず手続きが進んでいるのであれば、同じ状況を繰り返さないことが重要です。国民生活センターも、事業者から「説明するだけ」と言われても、会うことで強引な勧誘を受けて断りきれなくなる場合があるため、契約意思がなければ会わないよう案内しています。
したがって、契約意思がない場合は「明日の面談には行きません」「購入しません」「契約手続きを進めることには同意しません」「今後の勧誘も希望しません」など、曖昧さのない意思表示をする方法があります。電話だけでなく、メールなど記録が残る手段も利用し、送受信した内容を保存しておくと経緯を説明しやすくなります。
印鑑、印鑑証明書、源泉徴収票、本人確認書類などを持参するよう求められていても、契約を希望していないのであれば、新たな書類への署名・押印や追加資料の提出を安易に行わないことが大切です。
「個人情報を破棄するため会う必要がある」と言われたら
個人情報をすでに渡していることと、不動産を購入しなければならないことは別の問題です。「個人情報を破棄する書類を書く必要があるため来店してください」と言われた場合でも、その説明だけを理由に新たな契約を結ぶ必要があると考えるべきではありません。
来店が必要だと言われた場合は、まず「なぜ本人が対面で手続きする必要があるのか」「郵送や電子的な手続きでは対応できないのか」「必要な書類の名称と内容は何か」を書面やメールで確認するとよいでしょう。
特に、解約や個人情報に関する手続きという名目で呼び出され、現地で再び購入を勧められる可能性を不安に感じる場合には、先に消費生活センターなど第三者へ相談するほうが安全です。
家族や友人に相談するなと言われた場合は慎重になる
不動産投資は、物件価格だけでなく、ローン金利、管理費、修繕積立金、固定資産税、空室、家賃下落、設備交換、売却価格など多数の要素によって収支が変わります。数千万円規模の長期ローンになるケースも珍しくないため、その場で急いで決断する性質の商品ではありません。
そのため「家族・親・友人・同僚には相談しないで決めてほしい」など、第三者への相談を避けるよう求められた場合には慎重になるべきです。むしろ大きな契約ほど、家族や信頼できる第三者、必要に応じて弁護士などの専門家へ相談し、営業担当者とは独立した視点から契約内容を確認することが重要です。
国民生活センターでも、不動産取引について、内容を理解できない点や納得できない点がある場合には、それが解決するまで契約しないことを案内しています。[参照]
強引な勧誘を受けたときに保存しておきたい記録
トラブルについて第三者へ相談する場合、経緯が分かる資料があると状況を説明しやすくなります。契約関係書類だけでなく、営業担当者との連絡記録も削除せず保存しておきましょう。
- 申込書・契約書など署名した書類の控え
- 物件資料や収支シミュレーション
- 名刺、会社名、担当者名
- メールやSMS、メッセージアプリの履歴
- 電話があった日時や回数
- 面談した日時・場所・説明された内容のメモ
- 支払ったお金がある場合は領収書や振込記録
- ローン申込みをしている場合は金融機関や申込内容が分かる資料
「弁護士を立ててもよいと言われた」「断っても勧誘を続けられた」など、心理的な圧力を感じた発言についても、できるだけ日時とともに記録しておくとよいでしょう。
一人で交渉せず消費生活センターへ相談する
強引な不動産投資の勧誘で困った場合に利用できる公的な相談先が、消費者ホットライン188です。消費者庁によると、188へ電話すると、地方公共団体が設置する身近な消費生活センターや相談窓口へ案内されます。[参照]
特に、すでに申込書へサインしている、翌日に契約を迫られている、ローン審査が進んでいるなど時間的余裕がない場合には、次の面談や契約より先に相談する価値があります。書類を手元に用意して「何に署名したのか」「売主は誰か」「どこで申し込んだのか」「今後どの手続きを予定しているのか」を説明すると相談が進めやすくなります。
また国民生活センターは、悪質な勧誘を受けた場合には、その宅地建物取引業者へ免許を与えている都道府県や国土交通省の地方整備局などへの情報提供も案内しています。暴力を振るわれそうになった場合など、身の危険を感じる状況では警察への通報を優先します。
まとめ|契約したくないなら「契約してから解除」ではなく契約前に止める
不動産投資の勧誘では、申込みをした後でも「断る理由を説明しなければならない」「営業担当者が納得するまで断れない」と思い込まないことが重要です。購入する意思がないのであれば、その意思を明確に伝え、不要な面談や追加書類への署名・押印を避けることが基本になります。
また、クーリングオフできることを期待して一度売買契約を締結する方法は避けるべきです。不動産のクーリングオフには適用条件があるため、契約前なら契約を止めることを優先し、すでに契約済みなら自己判断で結論を出さず、契約書類を用意して消費生活センターや法律の専門家へ早めに相談しましょう。
特に、断っているのに勧誘が続く、第三者へ相談しないよう求められる、恐怖を感じて意思に反して手続きを進めているといった状況では、一人で営業担当者と交渉し続ける必要はありません。公的な相談窓口など第三者を早い段階で入れることが、被害やトラブルの拡大を防ぐための重要な選択肢になります。


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