賃貸住宅の申し込みでは、勤務先や勤続年数、年収などを申込書へ記入し、審査の途中で源泉徴収票や給与明細などの収入証明を求められることがあります。このとき、申告した年収と実際に証明できる収入に差があると、「このまま審査に落ちるのでは」と不安になる人も少なくありません。
ただし、申告額と収入証明が違うからといって、必ず賃貸契約ができなくなるとは限りません。審査方法は保証会社や貸主によって異なり、副業収入、勤続年数、家賃とのバランス、預貯金、連帯保証人など複数の事情を踏まえて判断される場合があります。
一方で、実際より多く申告した年収に合わせるために架空の給与明細などを用意するのは避けるべきです。金額の間違いや証明できない収入が判明した時点で、不動産会社へ正しい状況を説明して申込内容を訂正してもらうことが基本です。ここでは、家賃5万円程度の物件を例に、収入証明を求められた場合の考え方を解説します。
賃貸審査で収入証明を求められるのは珍しくない
賃貸の入居審査では、申込書へ記載された内容だけで判断されるとは限りません。勤務先への在籍確認や本人確認のほか、申込者の状況に応じて収入を確認できる書類の提出を求められることがあります。
収入証明として利用できる書類は審査先によって異なりますが、給与所得者であれば源泉徴収票、給与明細、課税証明書などが候補になります。副業や個人事業による収入の場合は、確定申告書などを求められることもあります。
重要なのは、どの書類なら認められるかは保証会社や管理会社ごとに異なるという点です。「夜の仕事だから一律に不可」「給与明細がなければ必ず審査落ち」などと一般化することはできません。仲介する不動産会社を通して、何を提出できるか確認する必要があります。
年収を多く書いてしまった場合は早めに訂正する
申込書に記載した年収が実際の収入と違うことに気付いた場合、最も避けたいのは、何も説明せずに金額の合わない収入証明を提出することです。審査側から見れば「申込書にはこの年収なのに、提出書類では大幅に少ない」という状態になります。
例えば昼の仕事について、本来の年収より月10万円分多くなるような金額で申告していた場合は、「申込時に年収を誤って記載したので訂正したい」と不動産会社へ伝えます。そのうえで、昼の仕事と副業それぞれの実際の収入状況を説明します。
間違いに気付いた後も誤った金額を正しいものとして押し通すより、自分から訂正を申し出るほうが適切です。審査中なら、不動産会社から保証会社へ訂正内容を伝えられる可能性があります。
昼の仕事と夜職を掛け持ちしている場合はどう考える?
複数の仕事をしている場合、収入そのものが存在していても、審査でどこまで収入として評価してもらえるかは別問題です。昼の勤務先については給与明細などを提出できても、夜職について収入証明を用意できない場合、審査上はその収入を十分に確認できないことがあります。
ただし、だからといって副業を隠す必要はありません。不動産会社には「昼の勤務先に加えて副業があり、毎月これくらいの収入がある。ただし副業について提出できる書類はこれだけ」と事実を整理して伝えます。
例えば給与振込なら通帳や銀行口座の入金履歴、給与明細が発行されているなら給与明細、税務上申告されている所得なら確定申告書や課税証明書などが候補になる可能性があります。ただし、銀行への入金があるだけで保証会社が正式な収入証明として認めるとは限らないため、自己判断で提出するのではなく不動産会社へ確認しましょう。
「手取り」と「年収」を混同しないことも重要
賃貸申し込みで年収を書くときに起こりやすいのが、手取り額と額面収入の混同です。一般に「年収」という場合、給与所得者では税金や社会保険料などが差し引かれる前の総支給額をもとに考えます。
例えば銀行口座へ毎月8万円振り込まれているからといって、単純に「8万円×12か月=年収96万円」とは限りません。給与明細には基本給や各種手当などの総支給額と、社会保険料・税金などを差し引いた手取り額が別々に記載されています。
申込内容を訂正する場合は、感覚的な月収から計算するより、源泉徴収票や直近の給与明細などを確認し、不動産会社へ「年収欄にはどの金額を書けばよいか」と確認すると間違いを防げます。
家賃5万円なら収入がいくらあれば必ず通るという基準はない
賃貸審査について「家賃は月収の3分の1以内なら通る」といった目安を見かけることがあります。しかし、これは法律で定められた合格ラインではありません。家賃5万円なら年収180万円で必ず合格する、といった一律の基準が存在するわけではありません。
審査では収入だけでなく、雇用形態、勤続状況、家賃、保証会社の基準、貸主側の条件などが関係します。保証会社によって審査基準が異なるため、同じ人・同じ家賃でも結果が同じになるとは限りません。
そのため「昼の仕事だけでは足りないから副業を多めに書く」という対応ではなく、実際の収入を正しく伝えたうえで、現在の条件で審査可能か不動産会社に調整してもらうことが大切です。
勤続6年のような継続勤務は正確に申告する
収入額だけでなく、勤務を継続しているという情報も申込時には正確に伝えておきたいポイントです。例えば同じ勤務先へ6年間勤務しているなら、その事実は申込書へ正しく記載します。
もちろん、勤続年数が長ければ必ず審査に通るわけではありません。しかし審査では「現在の家賃を継続的に支払えるか」が重要になるため、勤務先や雇用状況などの情報も確認材料になります。
副業収入が変動する場合も、「毎月必ず30万円」と断定するのではなく、実際の収入履歴をもとに説明することが大切です。変動が大きいなら、その点も含めて正確に伝えましょう。
滞納歴がないことだけで審査結果は決まらない
家賃や各種支払いの滞納経験がないことは安心材料の一つになり得ますが、それだけで今回の審査結果を予測することはできません。保証会社によって確認する情報や審査方法が異なるからです。
逆に、収入証明の提出を求められたこと自体を「信用されていない」「もう落ちる寸前」と考える必要もありません。追加書類によって申告内容を確認したうえで審査を進めることがあります。
審査結果を予想することより、現在提出できる書類と正確な収入を整理するほうが重要です。不動産会社は保証会社との窓口でもあるため、不明点を隠さず相談しましょう。
副業の収入証明が出せない場合に確認したい選択肢
副業収入を証明する一般的な書類を用意できない場合でも、そこで自己判断して申し込みを諦める必要はありません。不動産会社へ「副業収入を証明できる書類がない場合、ほかに提出可能な資料はあるか」と確認します。
審査先によっては追加資料や別の方法を案内される場合があります。また、現在の保証会社で条件が合わない場合でも、物件によっては別の保証会社を利用できるケースがあります。ただし、保証会社を自由に選べるとは限らず、管理会社や貸主が指定していることもあります。
そのほか、預貯金を考慮する審査、連帯保証人を付ける方法などが可能かを相談できる場合もあります。これらも物件・管理会社・保証会社によって対応が異なるため、不動産会社に確認するのが確実です。
不動産会社には何を伝えればよい?
年収の記載ミスに気付いた場合は、複雑に説明するより事実関係を整理して伝えるとスムーズです。重要なのは「正しい昼職の収入」「副業があること」「副業について用意できる証明書類」「年収欄を訂正したいこと」です。
例えば、「申込書の年収を計算・記入する際に実際より多く書いてしまいました。昼の勤務先の収入証明は提出できます。副業もありますが、こちらは通常の給与明細を用意できません。申込内容を正しい金額へ訂正したうえで、ほかに提出できる資料があるか確認したいです」という趣旨で相談できます。
「審査に通るよう数字を合わせる」のではなく、「正しい数字へ直して、審査側が必要とする資料を出す」という順番で考えるとよいでしょう。
やってはいけないのは収入証明を偽造すること
年収を多く書いてしまった後に、その数字へ合わせるため給与明細や源泉徴収票などを加工・偽造することは避けてください。単なる申込書の記載ミスとは問題の性質が大きく変わります。
また、不動産会社へ説明済みの副業について、審査が心配だからと後から話を変えることもおすすめできません。事実と書類が一致するよう整理することが重要です。
審査に通ることだけを目的にすると、契約後に毎月の家賃を支払えるかという本来重要な点を見落としやすくなります。家賃に加えて管理費、光熱費、通信費、食費、保険料、日用品費なども発生するため、一人暮らし開始後の収支も確認しておきましょう。
家賃5万円なら契約後の生活費も計算しておく
これまで同居相手から生活費の援助を受けていた場合、一人暮らしになると負担構造が大きく変わります。家賃5万円だけを見て判断するのではなく、毎月必ず発生する支出を一覧にしておくと安心です。
| 支出 | 確認したい内容 |
|---|---|
| 家賃 | 管理費・共益費を含めた月額 |
| 水道光熱費 | 電気・ガス・水道 |
| 通信費 | スマホ・インターネット |
| 食費・日用品 | 一人暮らし後の実費 |
| 社会保険・税金 | 給与天引き以外も確認 |
| 保証関連 | 保証会社の更新料・月額保証料など |
| 更新費用 | 更新料・保険など契約条件を確認 |
副業収入が月によって大きく変わるなら、最も稼げた月ではなく、収入が少ない月でも家賃と生活費を支払えるかを確認しておくと現実的です。
まとめ:年収の記載ミスは隠さず訂正し、証明できる収入を整理する
賃貸申し込みで年収を実際より多く書き、その後に収入証明を求められたとしても、それだけで必ず審査に落ちると決まるわけではありません。保証会社や貸主によって審査基準は異なり、副業を含めた収入や勤務状況などをどのように確認するかも異なります。
重要なのは、記載した年収が違うことに気付いた段階で不動産会社へ申し出て、正しい金額へ訂正することです。昼職について提出できる収入証明を用意し、副業についてはどのような資料なら認めてもらえるのか確認しましょう。
副業の証明が難しい場合でも、追加資料、預貯金、連帯保証人、別の審査方法などを相談できる可能性があります。一方、審査を通すために書類を加工したり、証明できない収入を事実と異なる形で申告したりすることは避けるべきです。まず不動産会社へ正確な事情を伝え、現在の条件でどのように審査を進められるか確認することが、契約へ向けた最も安全な進め方です。


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