年収700万円で5000万円の不動産投資は可能?年間収益・ローン返済・自己資金からの補填額をシミュレーション

不動産

年収700万円の会社員が5,000万円程度の収益不動産を購入する場合、「家賃はいくら入るのか」「ローンを返した後に年間いくら残るのか」「給与から持ち出しが必要になるのか」は、物件価格だけでは判断できません。

不動産投資の収支を左右するのは、家賃収入に対する表面利回りだけでなく、空室率、管理費、修繕費、固定資産税・都市計画税、保険料、管理委託費、ローン金利、返済期間などです。同じ5,000万円の借入でも条件によって年間キャッシュフローは大きく変わります。

重要なのは「年収700万円なら5,000万円を借りても大丈夫」と年収倍率だけで考えず、物件単体の収支が空室や修繕、金利上昇を含めても成り立つか確認することです。ここでは具体的な数字を使いながら、不動産投資で見るべき指標と年間収支の計算方法を解説します。

5000万円の物件でも年間収益は利回りによって大きく変わる

最初に確認する数字が「表面利回り」です。表面利回りは、年間の満室想定家賃収入を物件価格で割って計算します。

表面利回り=年間家賃収入÷物件価格×100です。例えば5,000万円の物件で年間家賃収入が300万円なら、表面利回りは6%となります。

物件価格 表面利回り 満室想定の年間家賃 月額換算
5,000万円 4% 200万円 約16.7万円
5,000万円 5% 250万円 約20.8万円
5,000万円 6% 300万円 25万円
5,000万円 7% 350万円 約29.2万円
5,000万円 8% 400万円 約33.3万円

ただし、ここでいう300万円などは「利益」ではありません。あくまで満室を前提とした家賃売上です。実際にはここからさまざまな支出が発生します。

表面利回りではなく実質的な収支を見る

不動産広告では表面利回りが目立ちますが、投資判断では運営費を差し引いた収益を見る必要があります。空室、管理委託費、共用部費用、修繕、固定資産税・都市計画税、保険などを考慮します。

例えば満室想定家賃が年間300万円でも、空室や滞納による損失15万円、管理委託費15万円、税金25万円、保険5万円、修繕・その他費用30万円が発生すると仮定すれば、ローン返済前の手残りは210万円です。

項目 仮定額
満室想定家賃 300万円
空室・滞納等 ▲15万円
管理委託費 ▲15万円
固定資産税等 ▲25万円
保険 ▲5万円
修繕・その他 ▲30万円
ローン返済前キャッシュフロー 210万円

上記は計算方法を理解するための仮定であり、実際の経費率を示すものではありません。区分マンション、一棟アパート、一棟マンションでは費用構造が異なり、築年数や設備状態によって修繕費も変わります。

5000万円を借りると年間ローン返済はいくらになる?

次にローン返済を考えます。5,000万円を借りても、金利と返済期間によって年間返済額は大きく異なります。元利均等返済を単純計算した概算例を見てみましょう。

借入額 金利 期間 月返済額の概算 年間返済額の概算
5,000万円 1.5% 35年 約15.3万円 約184万円
5,000万円 2.0% 35年 約16.6万円 約199万円
5,000万円 2.5% 35年 約17.9万円 約214万円
5,000万円 3.0% 35年 約19.2万円 約231万円
5,000万円 2.0% 30年 約18.5万円 約222万円

例えば年間家賃300万円、運営費等を差し引いたローン返済前キャッシュフロー210万円、ローン返済が年間約199万円なら、単純な税引前キャッシュフローは年間約11万円です。

一見黒字ですが、設備故障などで年間20万円の追加支出が発生すれば、その年は約9万円の持ち出しになります。5,000万円という借入額に対して年間11万円程度しか余裕がない計画なら、想定外の支出に対する安全余裕はかなり小さいと考えられます。

表面利回り別に5000万円物件の収支を試算

より分かりやすくするため、5,000万円の物件を5,000万円借り入れ、金利2%・35年、年間ローン返済を約199万円と仮定します。また、空室を含めた運営上の支出を満室想定家賃の25%と単純化して比較します。

表面利回り 満室家賃 25%差引後 ローン返済後の概算
4% 200万円 150万円 ▲49万円
5% 250万円 187.5万円 ▲11.5万円
6% 300万円 225万円 +26万円
7% 350万円 262.5万円 +63.5万円
8% 400万円 300万円 +101万円

この表はあくまで仮定に基づく簡易シミュレーションです。「利回り6%なら必ず26万円残る」という意味ではありません。実際には物件ごとの経費、融資条件、空室率などを一つずつ入力して計算する必要があります。

また一般に高い利回りには、立地、築年数、入居需要、修繕、流動性など別のリスクが伴うことがあります。そのため利回りだけを高くすれば安全になるわけでもありません。

「給与からいくら補填するか」は購入前に決まっていない

年収700万円だから毎年○万円を不動産へ補填する、という一般的な基準はありません。理想的には通常の家賃収入から運営費とローン返済を賄い、さらに突発的な支出へ対応できる余力を確保したいところです。

毎月の赤字を給与で埋めることを最初から前提とする投資は、給与収入が減少したときに不動産と家計の両方が苦しくなるため注意が必要です。

例えば毎月3万円の赤字なら年間36万円、毎月5万円なら年間60万円を給与から補填することになります。それに加えて固定資産税や突発修繕を別途負担する設計なら、「家賃収入があるから安心」とは言いにくくなります。

重要指標のDSCRでローン返済の余裕を見る

融資を使った不動産投資で覚えておきたい指標の一つがDSCR(Debt Service Coverage Ratio)です。簡略化すると、物件が生み出すローン返済前の収益が年間ローン返済額の何倍あるかを見る指標です。

DSCR=ローン返済前の純収益(NOI等)÷年間元利返済額として見る方法があります。例えばローン返済前の収益が250万円、年間返済額が200万円ならDSCRは1.25です。

1.0なら収益と返済がほぼ同額で、少し収益が悪化すると返済を賄えません。1を上回るほど返済余力があります。ただし「何倍なら絶対安全」という一律の基準ではなく、金融機関や物件タイプ、計算に含める費用によって判断は異なります。

空室率と家賃下落を入れたストレステストが重要

不動産会社から提示される満室想定収入だけで判断せず、「家賃収入が10%下がったらどうなるか」「金利が上がったらどうなるか」「大きな修繕が発生したらどうなるか」を購入前に計算することが重要です。

例えば満室家賃300万円から10%減少すると270万円です。運営費が大きく変わらない状態で収入だけ30万円減れば、年間26万円程度の黒字を想定していた物件が簡単に赤字へ転じることもあります。

さらに変動金利なら、将来の金利上昇によって返済額や利息負担が増える可能性があります。現在の金利だけでなく、金利が1~2ポイント高いケースも試算しておくとリスクを把握しやすくなります。

不動産所得の「利益」と手元のキャッシュは同じではない

不動産投資では、税務上の不動産所得と実際の手元資金を混同しないことも重要です。国税庁は、不動産所得について原則として「総収入金額-必要経費」で計算すると説明しています。国税庁 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)[参照]

ローン返済額のすべてが必要経費になるわけではありません。借入金の元本返済は基本的に必要経費ではなく、業務に対応する借入金利子などが必要経費の対象となります。また建物等については減価償却費が関係します。

そのため「確定申告では赤字なのに現金はそれほど減っていない」「税務上は利益が出ているのにローン元本返済によって手元資金が少ない」といったことが起こります。購入前には税務上の損益とキャッシュフローを別々に作ることが大切です。

購入時には物件価格以外の資金も必要

5,000万円の物件を5,000万円借りられたとしても、「自己資金ゼロで何も支払わなくてよい」とは限りません。不動産取得時には仲介手数料、登記関連費用、融資関連費用、印紙税、不動産取得税、保険など、条件に応じてさまざまな費用が発生します。

さらに購入後の空室や修繕へ対応するための現金も必要です。手持ち資金を購入時に使い切ってしまうと、給湯器やエアコンなどの故障、退去後の原状回復が重なったときに家計から急きょ資金を出すことになります。

したがって、金融機関が5,000万円を融資してくれるかどうかと、「5,000万円の借金を安全に維持できるか」は別の問題です。

年収700万円なら5000万円借りられるとは限らない

年収700万円に対して5,000万円は年収の約7.1倍ですが、この倍率だけで不動産投資ローンの可否を判断することはできません。投資用不動産の融資では、本人の年収・勤務先・勤続年数・金融資産・既存借入・信用情報などに加え、物件の収益性や担保評価なども審査材料になります。

また住宅ローンと投資用不動産ローンは目的が異なります。自分が居住するための住宅ローンを投資物件購入へ利用することはできないため、投資用の融資条件で検討する必要があります。

「借りられる金額」を投資予算の上限にするのではなく、物件収支から逆算して無理なく返せる借入額を考えるほうが安全性を評価しやすくなります。

5000万円の物件を見るときに最低限チェックしたい項目

実際の販売資料を受け取ったら、表面利回りだけを見るのではなく、次の項目を数字で確認しましょう。

  • 現在の年間家賃収入と満室想定家賃
  • 現在の入居率・過去の空室状況
  • 周辺の募集家賃と家賃下落リスク
  • 管理委託費
  • 固定資産税・都市計画税
  • 共用部の維持費
  • 修繕履歴と今後の修繕見込み
  • 火災・地震保険等の費用
  • ローン金利・返済期間・金利タイプ
  • 購入時諸費用
  • 売却時の想定価格と売りやすさ
  • 災害リスク・ハザード情報

一棟物件なら屋根・外壁・給排水・防水・共用設備などの大規模修繕も確認します。区分マンションなら管理費、修繕積立金、長期修繕計画、管理組合の財務状況などが重要になります。

購入前は3パターンの収支表を作る

実践的なのは「楽観」「標準」「厳しめ」の3パターンで年間キャッシュフローを作る方法です。販売会社から提示されたシミュレーションだけでなく、自分でも条件を変更して確認します。

ケース 想定例
楽観 高稼働・現状家賃維持・大きな修繕なし
標準 一定の空室・通常修繕・現実的な運営費
厳しめ 家賃低下・空室増加・金利上昇・修繕発生

厳しめのケースで年間50万円の持ち出しになるなら、その50万円を給与から何年間負担できるのかまで考えます。年収700万円という額そのものより、税引後の生活費、住宅費、教育費、既存ローン、貯蓄額などを含めた家計余力のほうが重要です。

「普段は黒字だが悪い年は補填できる」のと、「平常時から給与補填がないと成立しない」のでは、投資の安全余裕が大きく異なります。

まとめ:5000万円借入の判断は年収より物件のキャッシュフローを見る

年収700万円で5,000万円の不動産を購入した場合の年間収益や給与からの補填額は、物件価格だけでは決まりません。5,000万円の物件でも表面利回り4%なら満室想定家賃は年間200万円、6%なら300万円、8%なら400万円と大きな差があります。

さらに家賃収入から空室損失、管理費、修繕、税金、保険などを差し引き、その後にローン返済を行った残額が実際のキャッシュフローの目安になります。金利2%・35年で5,000万円を借りる仮定なら年間返済は概算約199万円となるため、利回りが低い物件では給与からの持ち出しが発生する可能性があります。

不動産投資では「5,000万円借りられるか」より、「空室・修繕・家賃下落・金利上昇があっても返済を継続できるか」を確認することが重要です。表面利回りだけでなくNOI、年間ローン返済額、DSCR、税引前キャッシュフロー、手元資金を確認し、購入前には厳しめの条件でも収支を試算しましょう。具体的な物件が決まった段階では、融資条件を金融機関へ確認するとともに、税務については税理士などの専門家へ確認することで、給与から想定外の補填が続くリスクを把握しやすくなります。

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