茨城県南部や千葉県北西部など関東で比較的大きな地震が起きると、「これは首都直下地震の前触れなのではないか」「次に東京で巨大地震が起きたらマンションは崩れるのではないか」と不安になることがあります。首都圏は複数のプレートが複雑に重なる地域であり、もともと地震活動が活発です。
ただし、茨城県南部や千葉周辺で起きた一つの地震から、近いうちに首都直下地震が発生すると判断することはできません。気象庁も、現在の科学的知見では地震の発生時期・場所・規模を高い確度で限定して予測することは困難だと説明しています。[参照:気象庁「地震予知について」]
一方で、首都圏に大きな地震が発生する長期的なリスクそのものは無視できません。また「首都直下地震が起きる=東京都内のマンションが一斉に倒壊する」という意味でもありません。建物の建築年代、耐震性能、構造、地盤、地震の震源位置などによって被害は大きく異なります。この記事では、地震発生直後の情報と長期的な首都直下地震リスクを分けながら、マンション居住者が確認しておきたいポイントを整理します。
- 茨城県南部では2026年8月23日に最大震度5弱の地震が発生している
- 茨城県南部や千葉の地震が「首都直下地震につながる」とは限らない
- 「首都直下地震」という一つの地震が決まっているわけではない
- 南関東でM7クラスの地震が起こる長期的な可能性は高い
- では首都直下地震が来たら東京都内のマンションは崩れるのか
- まず確認したいのが1981年の「新耐震基準」
- マンションなら「築年数」より建築確認時期と耐震診断を確認する
- 新耐震マンションでも「無傷」という意味ではない
- 高層マンションでは長周期地震動にも注意する
- マンションで現実的に怖いのは家具の転倒
- マンションではエレベーター停止も想定しておく
- 「マンションなら避難所へ行く」が正解とは限らない
- 地盤によって同じ東京都内でも揺れ方が違う
- 「今日震度4だったから明日大地震」という情報には注意する
- 最近の地震が不安ならマンションで今日確認したいこと
- マンション購入・賃貸を検討中ならどこを確認する?
- 大地震の被害想定は「全マンション倒壊」という内容ではない
- 不安になったときは「予知」より「自宅の耐震性」を調べる
- まとめ:茨城・千葉の地震だけで首都直下地震の接近とは判断できず、マンションも一律に倒壊するわけではない
茨城県南部では2026年8月23日に最大震度5弱の地震が発生している
気象庁の観測によると、2026年8月23日2時ごろ、茨城県南部を震源とするマグニチュード5.9、深さ約70kmの地震が発生しました。最大震度は5弱で、気象庁の緊急地震速報(警報)も発表されています。[参照:気象庁「緊急地震速報(警報)発表状況」]
この地震では長周期地震動も観測され、気象庁によると埼玉県南部、千葉県北西部、東京都23区で長周期地震動階級2が観測されています。東京都23区では震度4を観測した地点もありました。[参照:気象庁「2026年8月23日の長周期地震動観測結果」]
このような地震が起きれば首都直下地震を連想するのは自然ですが、「関東で震度4や5弱の地震が起きた」ことと「まもなく首都直下地震が起きる」ことは同じ意味ではありません。
茨城県南部や千葉の地震が「首都直下地震につながる」とは限らない
首都圏では、陸側のプレートに加えてフィリピン海プレートや太平洋プレートが関係する複雑な構造になっています。地震調査研究推進本部も、首都圏で地震活動が活発な理由として複数のプレートが互いに力を及ぼし合う構造を説明しています。[参照:地震調査研究推進本部「首都圏の大地震の姿」]
そのため茨城県南部、千葉県北西部、東京湾、東京都、神奈川県など、首都圏のさまざまな場所で地震が発生します。しかし「茨城県南部で地震が起きたから、その地震が次の東京直下の大地震へ順番につながっていく」という単純な仕組みではありません。
地震の後には周辺で地震活動が活発になることがありますが、気象庁も大きな地震が発生する具体的な日時や場所を現在の科学で予測することはできないとしています。[参照:気象庁「大地震後の地震活動(余震等)について」]
「首都直下地震」という一つの地震が決まっているわけではない
ニュースなどでは「首都直下地震」という名称が一つの巨大地震の固有名詞のように使われることがあります。しかし実際には、首都圏の直下やその周辺で発生し、首都機能へ大きな被害を及ぼす可能性がある複数の地震を考える必要があります。
国の被害想定では、首都中枢機能へ大きな影響を与える可能性がある地震として「都心南部直下地震」などを想定して防災対策を検討しています。2025年12月に公表された国の新たな被害想定では、都心南部直下地震が発生した場合、条件によって死者最大約1.8万人、全壊・焼失棟数最大約40万棟、経済被害約83兆円と推計されています。[参照:内閣府「首都直下地震対策検討ワーキンググループ」]
ただし、これらは特定の震源、季節、時刻、風速などの条件を設定した被害想定です。「次に必ずこの地震がこの条件で起こる」という予言ではありません。
南関東でM7クラスの地震が起こる長期的な可能性は高い
「今回の地震が大地震の前兆か」という短期予測と、「将来、首都圏で大地震が起きる可能性が高い」という長期評価は分けて考える必要があります。
地震調査研究推進本部では、相模トラフ沿いの地域でM7程度の地震が今後30年以内に発生する確率を70%程度と評価しています。これは過去の地震発生履歴などに基づいた長期評価です。[参照:地震調査研究推進本部「次に南関東で発生する大地震は?」]
ここで注意したいのは、「30年以内70%程度」は「東京の自宅が30年以内に70%の確率で震度7になる」という意味ではないことです。南関東の対象領域のどこかでM7程度の地震が発生する確率であり、実際の揺れは震源と自宅との距離、地盤などによって変わります。
では首都直下地震が来たら東京都内のマンションは崩れるのか
結論からいえば、首都直下地震が起きたからといって、都内のマンションが一律に倒壊するわけではありません。一方で「鉄筋コンクリートのマンションなら絶対に安全」と言い切ることもできません。
建物の被害は、地震動の強さだけでなく、建築年代、構造形式、設計、施工状態、経年劣化、耐震改修の有無、建物形状、地盤など多くの条件に左右されます。同じ震度6強の地域でも、すべての建物が同じ被害を受けるわけではありません。
東京都も建物の耐震性能について、建物の強さと粘りだけでなく、建物形状や経年状況などを考慮して評価すると説明しています。[参照:東京都耐震ポータルサイト「その他の建物の耐震化」]
まず確認したいのが1981年の「新耐震基準」
マンションの耐震性を考えるときに大きな目安になるのが1981年、昭和56年に導入された新耐震基準です。東京都によると、新耐震基準は震度6強~7クラスの大地震でも建物が倒壊しないことを目標としています。[参照:東京都耐震ポータルサイト]
一方、1981年5月31日以前の建築確認による建物は一般に旧耐震基準の建物として扱われます。1995年の阪神・淡路大震災では、新耐震基準の建物と比べて旧耐震基準の建物で大きな被害が多かったことから、旧耐震建物の耐震診断・耐震化が重要視されています。
ただし「1981年以前なら危険、1981年以降なら絶対安全」という二択でもありません。旧耐震でも耐震診断を行って十分な耐震性能が確認されていたり、耐震改修済みだったりする建物があります。一方、新耐震であっても地盤や建物固有の条件によって被害の程度は変わります。
マンションなら「築年数」より建築確認時期と耐震診断を確認する
中古マンションなどでは「築40年だから危険」「築30年だから安全」と築年数だけで判断しないことが大切です。新耐震基準か旧耐震基準かを見る場合には、完成した年だけではなく建築確認の時期を確認します。
旧耐震に該当するマンションなら、管理組合や管理会社へ耐震診断を実施しているか、診断結果はどうだったか、耐震補強工事を実施したかを確認すると具体的な耐震性能を把握しやすくなります。
東京都の耐震ポータルサイトでは、鉄筋コンクリート造などの既存建築物についてIs値という構造耐震指標などを用いて耐震性能を評価する方法を案内しています。[参照:東京都耐震ポータルサイト]
新耐震マンションでも「無傷」という意味ではない
新耐震基準で「倒壊しないことを目標」としていることは、巨大地震が来ても壁にひび一つ入らず、そのまま普通に生活できることを保証するものではありません。
強い地震では、建物本体が倒壊しなくても、外壁、内装、設備、給排水管、エレベーター、電気、ガス、受水槽などに被害が発生する可能性があります。玄関ドアが変形して開きにくくなることや、室内の家具・家電が転倒する危険もあります。
つまりマンション防災では、「建物が倒れるかどうか」だけを心配するのではなく、倒壊しなくても数日から長期間生活が難しくなる可能性まで考える必要があります。
高層マンションでは長周期地震動にも注意する
高層マンションでは、短く激しい揺れだけでなく長周期地震動も重要です。長周期地震動とは、周期が長い大きな揺れで、高層建物を長時間大きく揺らすことがあります。
実際に2026年8月23日の茨城県南部の地震でも、東京都23区、埼玉県南部、千葉県北西部で長周期地震動階級2が観測されています。[参照:気象庁「長周期地震動の観測結果」]
高層階では建物自体が倒壊しなくても、家具が大きく移動したり、長時間揺れ続けたりする危険があります。背の高い家具、テレビ、冷蔵庫、電子レンジなどを固定しておくことが重要です。
マンションで現実的に怖いのは家具の転倒
耐震性のあるマンションに住んでいても、室内の安全対策をしていなければ強い揺れでけがをする可能性があります。大型家具が倒れる、食器棚から食器が飛び出す、テレビが移動するなどの室内被害です。
特に寝室では、ベッドの横へ背の高いタンスや本棚を置かないことが重要です。固定できない場合でも、少なくとも「倒れたときに人を直撃しない方向」へ配置を変更するだけでリスクを減らせます。
東京都の2022年の被害想定でも、防災・減災対策として家具類の転倒・落下・移動防止対策が被害軽減に関係する項目として検討されています。[参照:東京都「首都直下地震等による東京の被害想定」]
マンションではエレベーター停止も想定しておく
大地震ではエレベーターが安全装置によって停止する可能性があります。建物が無事でも、復旧するまで高層階と地上を階段で往復しなければならなくなる場合があります。
例えば20階に住んでいて断水した場合、飲料水を階段で運ぶことは大きな負担になります。そのため高層マンションほど「地震が起きてから水を買いに行く」のではなく、日頃から各家庭で飲料水や食料を備蓄しておく意味が大きくなります。
乳幼児、高齢者、持病がある人、ペットがいる家庭では、一般的な水・食料だけでなく、それぞれに必要な物を余裕を持って用意しておくことが大切です。
「マンションなら避難所へ行く」が正解とは限らない
大地震が起きたとき、反射的に避難所へ向かうことが必ずしも正解とは限りません。建物に倒壊や火災などの危険がなく、自宅で安全に生活できる状態なら、在宅避難が選択肢になります。
反対に建物が傾いた、柱や梁に重大な損傷が見える、火災が迫っているなど危険がある場合には、安全な場所へ避難する必要があります。発災後は管理組合・自治体・消防などからの情報も確認します。
「マンションだから絶対残る」「地震が来たら必ず外へ出る」と事前に一つの行動へ決めつけず、そのときの建物と周囲の状況から判断できるようにしておくことが大切です。
地盤によって同じ東京都内でも揺れ方が違う
地震の被害は震源だけでなく地盤条件にも左右されます。柔らかい地盤では地震動が増幅されることがあり、埋立地などでは液状化の可能性も考える必要があります。
そのため「東京都内のマンション」という情報だけでは、どれほど危険なのかを正確に判断できません。同じ区内でも場所によって地盤条件は異なります。
自宅の具体的なリスクを知りたい場合は、東京都や各区市町村が公開している防災マップ、ハザードマップ、地域危険度などを確認すると役立ちます。東京都は首都直下地震などの被害想定やデジタルマップも公開しています。[参照:東京都防災ホームページ「地震被害想定」]
「今日震度4だったから明日大地震」という情報には注意する
地震が続くとSNSや動画サイトなどで「これは巨大地震の前兆」「○日以内に首都直下地震が来る」といった情報が広がることがあります。しかし、日時・場所・規模を特定した確度の高い地震予知は、現在の科学技術ではできません。
気象庁は2026年版の資料でも、日時と場所を特定した地震予知は現在の科学技術では不可能であるとして、根拠のない情報に振り回されないよう呼びかけています。[参照:気象庁「気象業務はいま2026」]
一方で「予知できない=大地震は来ない」という意味でもありません。いつ発生しても対応できるように備えることが、現在できる最も現実的な対策です。
最近の地震が不安ならマンションで今日確認したいこと
地震のニュースを見て不安になったときは、発生時期を予想し続けるより、自宅の弱点を一つずつ減らすほうが実際の安全につながります。
- マンションが旧耐震か新耐震か確認する
- 旧耐震なら耐震診断・耐震改修の実施状況を管理組合へ確認する
- 自治体のハザードマップや地震被害想定で自宅周辺を確認する
- 寝室のタンス・本棚などを固定する
- テレビや大型家電の転倒・移動対策をする
- 食器棚の扉が開かないよう対策する
- 飲料水・食料・簡易トイレを備蓄する
- モバイルバッテリーを充電しておく
- 懐中電灯をすぐ使える場所へ置く
- 避難場所と避難経路を確認する
- 家族との連絡方法を決める
特に簡易トイレはマンション防災で忘れやすい用品です。断水や排水設備の問題が発生すると、建物自体に大きな損傷がなくてもトイレを通常どおり使えなくなる可能性があります。
マンション購入・賃貸を検討中ならどこを確認する?
これから東京でマンションを選ぶ場合、首都直下地震を心配して「高層か低層か」だけで判断するより、耐震性能や地盤、管理状況を総合的に確認するほうが有効です。
中古マンションなら、建築確認時期、耐震診断の有無、耐震補強履歴、大規模修繕履歴などを確認します。旧耐震マンションであっても耐震改修済みの場合があるため、築年数だけで判断しないことが重要です。
さらに管理組合の防災マニュアル、非常用電源、防災備蓄、エレベーター停止時の対応なども確認すると、建物の耐震性能だけでは分からない「被災後の生活のしやすさ」まで判断できます。
大地震の被害想定は「全マンション倒壊」という内容ではない
東京都が2022年に公表した首都直下地震等の被害想定では、都心南部直下地震が冬の夕方に発生するケースで、23区の約6割の範囲が震度6強以上になると想定されました。また、当時の想定で建物被害は約19万4,400棟とされました。[参照:東京都「首都直下地震等による被害想定を公表」]
被害が非常に大きい想定であることは間違いありません。しかし、これは「東京の建物がすべて倒壊する」という数字ではありません。建物ごとに構造や耐震性が違うため、無被害に近い建物から大きく損傷する建物まで幅があります。
また被害想定は一定条件を設定したシミュレーションであり、東京都自身も条件の設定によって結果が大きく異なることに注意するよう説明しています。[参照:東京都「首都直下地震等による東京の被害想定」]
不安になったときは「予知」より「自宅の耐震性」を調べる
茨城県や千葉県で地震が発生するたびに「次は東京か」と考えていると、不安だけが大きくなりやすくなります。現在の科学では次の大地震の日時を正確に知ることはできません。
一方、自分のマンションについては調べられることがたくさんあります。建築確認時期、耐震診断、耐震改修、地盤、防災設備、家具固定状況などです。
「いつ来るか」は分からなくても、「来たときの被害を減らす」ことはできます。これは地震への不安を具体的な行動へ変えるうえでも重要な考え方です。
まとめ:茨城・千葉の地震だけで首都直下地震の接近とは判断できず、マンションも一律に倒壊するわけではない
茨城県南部や千葉周辺では地震が繰り返し発生しますが、一つの震度4や震度5クラスの地震を根拠として「これが首都直下地震につながり、まもなく東京で大地震が起こる」と判断することはできません。気象庁も、現在の科学的知見では地震の時期・場所・規模を高い確度で限定した予測は困難だとしています。[参照:気象庁「地震予知について」]
ただし、南関東でM7程度の地震が発生する長期的なリスクが高いことも事実です。地震調査研究推進本部では、対象となる南関東の地域でM7程度の地震が今後30年以内に発生する確率を70%程度と評価しています。[参照:地震調査研究推進本部]
そして首都直下地震が発生しても、東京都内のマンションが一斉に倒壊するわけではありません。新耐震基準は震度6強~7クラスでも倒壊しないことを目標としており、旧耐震建物と比較して大地震での倒壊リスクを抑えることを目的に設計されています。ただし、新耐震だから無傷が保証されるわけではなく、建物ごとの構造、経年状態、地盤などによって被害は異なります。[参照:東京都耐震ポータルサイト]
マンション居住者にとっては、建物の倒壊だけでなく、家具転倒、長周期地震動、エレベーター停止、停電、断水、トイレ、通信障害なども現実的な問題になります。特に高層階では、建物が安全でもエレベーターやライフラインが止まれば生活が難しくなることがあります。
最近地震が続いて不安を感じたときこそ、「次の地震がいつ来るか」を予想するより、自宅マンションの耐震性を確認し、家具固定・水・食料・簡易トイレ・電源・避難経路を準備することが最も現実的です。地震発生時にはSNS上の予言ではなく、気象庁、内閣府、東京都、居住自治体など公的機関の最新情報を確認するようにしましょう。


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