「家賃を払い続けても自分の資産にならないのだから、同じ金額を払うならマンションを買ったほうが得」と言われることがあります。しかし、賃貸の家賃と住宅ローンの返済額だけを比べて持ち家のほうが得と判断するのは適切ではありません。分譲マンションを所有すると、住宅ローン以外にも管理費、修繕積立金、固定資産税・都市計画税、火災・地震保険、専有部分の修理費などが発生し、購入・売却時にも諸費用がかかるからです。
特にマンションでは、住宅ローンを完済しても管理費や修繕積立金がなくなるわけではありません。建物が存在し共同管理を続ける限り、エレベーター、廊下、外壁、屋上、給排水設備などの共用部分を維持していく必要があります。
一方で、住宅ローン返済額のすべてが「消えていくお金」というわけでもありません。返済額には元金と利息が含まれ、元金返済によって住宅ローン残高が減っていきます。売却可能な価値が残っていれば、それが所有者の資産になります。つまり、賃貸と購入を正しく比較するには「家賃 vs 住宅ローン」ではなく、住居にかかる総費用と最終的に残る資産価値まで見る必要があります。
- 結論:「賃貸はもったいないから買う」は必ずしも正しくない
- 分譲マンションでは住宅ローン以外に毎月のお金がかかる
- 修繕積立金が将来上がるという理解はおおむね正しい
- 「古くなったら必ず修繕積立金が○万円になる」とまでは言えない
- 管理費と修繕積立金が合計3万円というのはあり得る
- 35年・金利1%なら月4万円で借りられるのはいくら?
- 月7万円以内に収めるなら「ローン4万円+管理関係3万円」だけでも余裕がない
- では住宅ローンの元金返済も「捨てるお金」なのか
- 「家賃は全部捨て金」という表現にも問題がある
- 「持ち家なら最後に資産が残る」も条件付き
- ローン残高より売却価格が安くなるリスクもある
- 新築マンションと築30年賃貸を比較すると価格差が大きくて当然
- 具体例:月7万円の賃貸と月15万円の購入を比べる場合
- 「賃貸では資産が残らない」なら差額の貯蓄も比較する
- 購入側にも「家賃に相当する消費部分」がある
- 修繕積立金は「損なお金」なのか
- 中古マンションなら修繕積立金の「残高」まで確認する
- 購入前には長期修繕計画を必ず見る
- 「ローンを払い終えても修繕積立金を払う」のはなぜ?
- 賃貸の家賃にも建物維持費は間接的に含まれている
- 月7万円の駅近3LDKなら「今の賃貸が強い」可能性もある
- 「同じ月7万円」にこだわるなら購入できる価格が低くなるのは当然
- 「賃貸より2~3倍払えば自分のもの」という理解は半分正しく、半分違う
- 賃貸と購入は35年間の総額だけでも決められない
- 比較するときは「35年間の総キャッシュフロー」を作る
- 購入前に確認すべき数字は「今月いくら」だけではない
- 新築なら「最初の管理費・修繕積立金が安い」だけで選ばない
- 中古なら安さだけでなく「管理状態」を買う意識が重要
- 現在の賃貸に満足しているなら「買わない」ことも立派な選択
- 逆に支出が増えても購入する価値があるケースもある
- 「家賃を捨てるのが嫌」より先に考えたいこと
- まとめ:「賃貸はもったいない」ではなく総コストと残る資産で判断する
結論:「賃貸はもったいないから買う」は必ずしも正しくない
賃貸と購入のどちらが経済的に有利になるかは、物件価格、家賃、居住期間、住宅ローン金利、管理費、修繕積立金、税金、将来の売却価格などによって変わります。そのため「賃貸は家賃を捨てているから必ず損」「持ち家なら必ず資産が残る」という二択では考えられません。
例えば駅に近い3LDKを月7万円で借りられている一方、同じ地域・同程度の広さや立地の分譲マンションを購入すると毎月15万円程度必要になるなら、「現在の家賃と同じ支払いで資産形成できる」という前提そのものが成立していません。
このようなケースでは、賃貸住宅の家賃が地域の分譲価格に対してかなり安い可能性があります。現在の住居が築30年で、購入候補が新築・築浅なら、そもそも比較している住宅の築年数や品質も違います。築30年の賃貸3LDKと新築分譲3LDKの毎月負担が同じにならないこと自体は不自然ではありません。
分譲マンションでは住宅ローン以外に毎月のお金がかかる
マンション購入後の代表的な支出を整理すると、住宅ローンだけではないことが分かります。
| 支出 | 住宅ローン完済後 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 住宅ローン元金 | なくなる | 借りた購入資金の返済 |
| 住宅ローン利息 | なくなる | 金融機関へ支払う利息 |
| 管理費 | 原則続く | 共用部分の日常管理、清掃、管理会社への委託費など |
| 修繕積立金 | 原則続く | 将来の大規模修繕などに備える積立金 |
| 固定資産税・都市計画税 | 所有する限り対象になり得る | 不動産所有に伴う税負担 |
| 保険 | 必要に応じて続く | 火災保険・地震保険など |
| 専有部分の修理 | 続く | 給湯器、エアコン、設備、内装など |
| 駐車場等 | 利用する限り続く | 駐車場・駐輪場など |
したがって「35年後にローンを払い終えれば住居費はゼロ」というイメージは正しくありません。ローン返済はなくなりますが、マンションを維持するためのお金と税金などは残ります。
ただし、管理費と修繕積立金をまとめて「全部が修繕積立金」と考えないことも重要です。両者は用途が異なります。管理費は日常的な管理に使われ、修繕積立金は将来の計画的な修繕のために積み立てるお金です。
修繕積立金が将来上がるという理解はおおむね正しい
新築マンションを見ると、当初の修繕積立金が意外に安く設定されていることがあります。しかし、その金額が何十年も続くとは限りません。
修繕積立金には、計画期間を通じておおむね均等に積み立てる「均等積立方式」と、当初の負担を低くして将来段階的に引き上げる「段階増額積立方式」があります。国土交通省は、将来にわたり安定的に修繕積立金を確保する観点から均等積立方式が望ましいとしています。[参照:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドラインの改定」]
国土交通省のマンション管理・再生ポータルサイトでも、段階増額積立方式では将来の値上げを前提としていること、入居当初の金額だけでなく長期修繕計画の収支を確認することが重要だと案内されています。[参照:国土交通省「マンションの管理状況チェックシート」]
「古くなったら必ず修繕積立金が○万円になる」とまでは言えない
一方、「マンションが古くなれば修繕積立金は必ず月3万円になる」「最後は必ず何倍にもなる」という決まったルールがあるわけではありません。必要額はマンションの規模、階数、機械式駐車場などの設備、長期修繕計画、戸数、工事価格などによって変わります。
また、均等積立方式なら最初から比較的高めの金額を徴収し、その後の急激な増額を避ける考え方もあります。段階増額方式なら将来の増額予定を確認する必要があります。
さらに、計画上は十分だったとしても資材費や人件費が上昇すれば工事費が想定を超え、修繕積立金の見直しが必要になることがあります。国土交通省も、積立方法にかかわらず工事費用の高騰などによって必要な修繕積立金が増える可能性があるため、変更予定を確認するよう案内しています。[参照:国土交通省「マンションの管理状況チェックシート」]
管理費と修繕積立金が合計3万円というのはあり得る
物件によって大きな差はありますが、管理費と修繕積立金を合計して月数万円になること自体は珍しい仕組みではありません。特に一定の広さがある住戸や、共用設備が充実したマンションでは負担が大きくなることがあります。
例えば管理費1万3,000円、修繕積立金1万7,000円なら合計3万円です。この場合、35年ローンを完済しても3万円が自動的にゼロになるわけではありません。
ただし「現在3万円だから老後もずっと3万円」とも限りません。管理費は人件費や委託費などの変化で改定される可能性があり、修繕積立金も長期修繕計画の見直しによって変更される可能性があります。購入前には現在額だけでなく、長期修繕計画と将来の改定予定まで確認することが重要です。
35年・金利1%なら月4万円で借りられるのはいくら?
住宅ローンを元利均等返済、返済期間35年、金利年1%が全期間変わらないという単純化した条件で計算すると、借入額1,600万円の毎月返済額は約4万5,000円です。したがって「月4万円なら1,600万円程度」という計算より、実際にはもう少し借入可能額が小さくなります。
月4万円に収めるなら、同じ条件で借入額はおおむね1,400万円台前半が目安になります。さらに購入時には頭金のほか、登記、ローン関連費用、保険などの諸費用も考える必要があります。
また変動金利を利用するなら、「35年間ずっと1%」と決め打ちした資金計画は安全とはいえません。将来金利が変わった場合にも家計が耐えられるか確認する必要があります。
月7万円以内に収めるなら「ローン4万円+管理関係3万円」だけでも余裕がない
現在の家賃が7万円で、マンションの管理費・修繕積立金が月3万円なら、同じ月額7万円にするには住宅ローン返済を4万円程度までに抑える必要があります。この考え方自体は方向として合っています。
しかし購入後には固定資産税などもあります。例えば年間12万円の所有コストが別にあれば月平均では1万円です。さらに給湯器、エアコン、水回りなど専有部分の設備交換に備える費用も必要です。
そのため「住宅ローン4万円+管理費等3万円=家賃7万円と完全に同額」と考えるのも不十分です。所有コストを月額換算して比較するなら、税金、保険、専有部分の修繕予備費なども含める必要があります。
では住宅ローンの元金返済も「捨てるお金」なのか
ここは賃貸と購入を比較するときに最も誤解されやすいところです。住宅ローンの返済額をすべて家賃と同じ「費用」として扱うのも正確ではありません。
例えば月10万円のローン返済のうち、8万円が元金、2万円が利息だったとします。8万円の元金を返せば借金が8万円減ります。物件価格が維持されていると仮定すれば、その分だけ純資産は増える方向になります。
一方、利息は金融機関へ支払う費用です。管理費、税金、保険なども基本的には資産として自分の口座に残るお金ではありません。このため購入側は「毎月の現金支出」と「経済的なコスト」を分けて考える必要があります。
「家賃は全部捨て金」という表現にも問題がある
家賃を払っても不動産の所有権は得られません。しかし家賃は何も得られない支出ではなく、一定期間その住宅を使用する権利に対して支払う料金です。
さらに賃貸では、建物全体の大規模修繕費を入居者が修繕積立金として直接積み立てる必要がなく、固定資産税も所有者として直接負担しません。設備が故障した場合も、借主の故意・過失などではない通常の故障なら貸主側の修繕対象になることがあります。
また転勤、家族構成の変化、近隣環境の変化などが起きたときに住み替えやすいという価値があります。つまり賃貸では、資産を取得しない代わりに、住宅価格下落や大規模修繕など所有に伴うリスクの一部を負わず、住み替えの自由度を買っているとも考えられます。
「持ち家なら最後に資産が残る」も条件付き
マンション購入の大きなメリットは、住宅ローンを返済していけば所有する不動産が残ることです。ただし「買った価格と同じ価値の資産が35年後に残る」とは限りません。
例えば4,000万円で購入したマンションのローンを完済しても、35年後の市場価格が2,000万円なら、残る資産の市場価値はその時点の約2,000万円です。反対に立地が良く需要が強ければ、高い価格を維持するケースもあります。
マンションの価値は築年数だけでは決まりません。駅距離、地域の人口・住宅需要、管理状態、修繕履歴、間取り、階数、眺望などさまざまな条件に左右されます。「ローンを完済した=購入額と同額の資産を手に入れた」ではない点は重要です。
ローン残高より売却価格が安くなるリスクもある
購入して比較的早い時期に転勤や離婚、介護などで売却しなければならなくなった場合、住宅ローン残高より売却価格が低くなる可能性があります。
例えばローン残高が3,500万円残っている時点で3,200万円でしか売れず、さらに売却費用も発生するなら、不足分を自己資金などで処理しなければならないケースがあります。
そのため、数年以内に住み替える可能性が高い人ほど「家賃がもったいないから」という理由だけで購入するのは慎重に考える必要があります。購入は長期間住むほど初期費用を長い期間へ分散しやすくなります。
新築マンションと築30年賃貸を比較すると価格差が大きくて当然
「現在の駅近3LDK・築30年・家賃7万円」と「新築または築浅3LDK分譲マンション」を比較する場合、所有か賃貸かという違い以外に築年数という非常に大きな条件差があります。
公平に比較するなら、現在の賃貸と同じ地域、同程度の駅距離、同程度の面積、同程度の築年数の中古マンション価格も調べる必要があります。
反対に新築マンションと比較したいなら、同じ地域にある新築・築浅3LDK賃貸の家賃も調べます。これによって「所有だから高い」のか、「新築・築浅だから高い」のかを切り分けられます。
具体例:月7万円の賃貸と月15万円の購入を比べる場合
仮に現在の家賃が7万円、購入すると住宅ローン11万円、管理費・修繕積立金3万円、その他の所有コストを月平均1万円とすると、購入側の現金支出は約15万円です。
この場合、「7万円を捨てるくらいなら15万円払って購入したほうが得」と単純には言えません。差額は毎月8万円、年間96万円です。
もちろん購入側の住宅ローン元金返済部分は資産形成につながります。しかし賃貸側も毎月8万円の差額を貯蓄・投資できるなら、それも資産形成です。35年間の比較では、この差額をどう扱うかによって結果が大きく変わります。
「賃貸では資産が残らない」なら差額の貯蓄も比較する
賃貸と購入を比較するときは、35年後に購入者がマンションを所有していることだけを見るのではなく、賃貸側が安い住居費との差額をどう使ったかも考える必要があります。
例えば購入より賃貸のほうが毎月5万円安く、その5万円を35年間すべて消費した場合、確かに購入側のほうが資産を形成しやすく見えます。一方、その差額を継続的に貯蓄した場合は元本だけでも相当額になります。運用した場合には結果がさらに変わりますが、投資には価格変動リスクがあります。
つまり「持ち家=強制的な資産形成」という面はありますが、「賃貸=資産形成できない」という意味ではありません。住居費を抑えて金融資産を作るという方法もあります。
購入側にも「家賃に相当する消費部分」がある
持ち家は資産になるから支払ったお金が全部残る、という説明も正確ではありません。住宅ローン利息、管理費、税金、保険、購入・売却諸費用などは、基本的に住宅そのものの市場価値として同額が戻ってくるものではありません。
建物も時間とともに古くなります。適切な修繕によって機能を維持しても、新築時と同じ価値が永久に続くわけではありません。
その意味では、持ち家にも「住むために消費するコスト」があります。賃貸だけに捨て金が存在し、購入には存在しないという構図ではありません。
修繕積立金は「損なお金」なのか
毎月2万円、3万円と修繕積立金を払うと損をしているように感じるかもしれません。しかしマンションでは外壁、防水、給排水設備などを維持する必要があり、その費用を区分所有者全体で計画的に準備するためのお金です。
むしろ修繕積立金が極端に安いマンションを「維持費が安くてお得」と即断するほうが危険です。必要な工事に対して積立金が不足すれば、将来的な大幅値上げや一時金などの問題につながる可能性があります。
国土交通省も、マンションの良好な居住環境と資産価値を維持するには計画的な修繕工事が不可欠で、そのために長期修繕計画に基づく適正な修繕積立金の設定が重要だとしています。[参照:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」]
中古マンションなら修繕積立金の「残高」まで確認する
中古マンションを検討するときは、現在の月額だけを見るのでは不十分です。重要なのは管理組合に現在どれくらいの修繕積立金が蓄えられていて、今後予定している工事を賄えるのかという点です。
国土交通省のマンション管理・再生ポータルサイトでも、修繕積立金の累計額と長期修繕計画上の工事費を確認し、将来不足しないかを見るよう案内しています。確認資料として管理組合の予算案・決算報告書や長期修繕計画が挙げられています。[参照:国土交通省「マンションの管理状況チェックシート」]
例えば月1万円しか修繕積立金を払わなくてよいマンションでも、積立残高が不足していて数年後に大規模な値上げが予定されているなら、「維持費1万円のマンション」と考えるのは危険です。
購入前には長期修繕計画を必ず見る
新築・中古を問わず、マンション購入時には長期修繕計画を確認したいところです。特に見るべきなのは現在の修繕積立金だけではありません。
- 均等積立方式か段階増額積立方式か
- 5年後、10年後、20年後の修繕積立金はいくらか
- 長期修繕計画が定期的に見直されているか
- 現在の修繕積立金残高は十分か
- 大規模修繕はいつ予定されているか
- 過去の大規模修繕を適切に実施しているか
- 一時金や借入金を予定していないか
- 管理費・修繕積立金の滞納状況はどうか
- 機械式駐車場など維持費の大きな設備があるか
国土交通省はマンション管理に関するガイドラインや購入・管理時に確認したい情報を公開しています。[参照:国土交通省「マンション管理」]
「ローンを払い終えても修繕積立金を払う」のはなぜ?
住宅ローンと修繕積立金はそもそも別のものだからです。住宅ローンは「マンションを買うために借りたお金」の返済です。一方、修繕積立金は「所有しているマンションを将来修繕するためのお金」です。
ローンを完済しても、築35年の建物はその後も存在します。むしろ築年数が進めば、給排水設備、防水、外壁など修繕すべき箇所が増えていく可能性があります。
戸建てなら修繕積立金という名目で毎月徴収されないだけで、屋根、外壁、給湯器、水回りなどを自分で修理する必要があります。マンションはそのうち共用部分について、所有者全員で計画的に資金を集めていると考えると理解しやすいでしょう。
賃貸の家賃にも建物維持費は間接的に含まれている
もちろん賃貸なら建物維持費がこの世から消えるわけではありません。大家も固定資産税や修繕費などを負担しており、家賃はそうした経費や市場の需給を踏まえて設定されています。
ただし借主が大規模修繕のために突然数百万円を所有者として負担するという構造ではありません。建物そのものの価格下落リスクも基本的には所有者側が負います。
このリスク分担の違いも、賃貸と所有を比較するときには重要です。
月7万円の駅近3LDKなら「今の賃貸が強い」可能性もある
もし現在の駅近3LDKが月7万円で、生活上大きな不満がなく、同等立地・面積の購入物件では総支払額が月14万~20万円になるのであれば、経済面だけで急いで購入する必要があるとは限りません。
特に築30年という理由で家賃が低く抑えられている一方、購入候補を新築・築浅に限定しているなら、支払い額が2倍近く違っても「賃貸だから得、購入だから損」とは言えません。住宅のグレードが異なるためです。
まず現在の住居に近い条件の中古分譲マンションを探し、それでも所有コストが大幅に高いのかを確認すると、市場の実態が見えやすくなります。
「同じ月7万円」にこだわるなら購入できる価格が低くなるのは当然
家賃7万円と所有時のキャッシュフローを同程度にしたいのであれば、管理費・修繕積立金・税金などを差し引いた残りしか住宅ローンへ使えません。
仮に管理費と修繕積立金が月3万円、税金・保険・専有部分の修繕予備費を月平均1万円と見積もれば、住宅ローンへ使えるのは約3万円です。この条件で新築・築浅3LDKを探すのが難しい地域は当然あります。
これは計算を間違えているというより、現在の家賃7万円という住居費が、購入市場の価格と比較してかなり有利という可能性を示しています。
「賃貸より2~3倍払えば自分のもの」という理解は半分正しく、半分違う
購入した場合の毎月支出が現在の家賃の2~3倍になるケースは実際にあり得ます。しかし、それをそのまま「同じ住宅に2~3倍払う」と表現すると正確ではありません。
第一に、新築・築浅と築30年では物件条件が異なります。第二に、住宅ローン返済には元金返済が含まれます。第三に、購入したマンションには売却可能な資産価値が残る可能性があります。
一方で、購入価格のすべてが資産として残るわけでもありません。利息、管理費、税金、保険、諸費用などは発生しますし、建物は築年数が進みます。したがって「2倍払って全部資産になる」わけでも「2倍全部を捨てる」わけでもありません。
賃貸と購入は35年間の総額だけでも決められない
住宅は投資商品であると同時に生活の場所です。経済的な損得だけなら将来の売却価格まで計算できますが、実際には住み心地や自由度にも価値があります。
持ち家なら、管理規約などの範囲内で内装や設備を自分好みに変更しやすく、更新拒絶などを気にせず長く住めます。一方、賃貸なら転職、転勤、子どもの独立、介護などに合わせて住居を変えやすいというメリットがあります。
老後についても、持ち家ならローン完済後に住宅ローン返済がなくなるメリットがある一方、修繕費・税金などは残ります。賃貸なら家賃が続きますが、多額の住宅資金を不動産へ固定しなくてよいという違いがあります。
比較するときは「35年間の総キャッシュフロー」を作る
購入を本格的に検討するなら、毎月のローン返済額だけではなく、少なくとも35年間の支出表を作ると判断しやすくなります。
| 賃貸側で計算するもの | 購入側で計算するもの |
|---|---|
| 家賃 | 住宅ローン元利返済 |
| 更新料等 | 管理費 |
| 駐車場 | 修繕積立金 |
| 火災保険等 | 固定資産税・都市計画税 |
| 引っ越し費用 | 購入時諸費用 |
| 将来の家賃変動 | 保険・専有部分修繕費 |
| 差額を貯蓄・運用した場合の資産 | 売却時費用 |
| 最終的な金融資産 | 最終的なマンション売却価値・ローン残高 |
こうすると、「35年後にマンションが残る」という購入側のメリットと、「毎月の差額を貯められる」という賃貸側のメリットを同じ土俵で比較できます。
購入前に確認すべき数字は「今月いくら」だけではない
マンション販売時には「月々○万円台から」という表示が目につきますが、家計を考えるならローン返済額以外も一覧にする必要があります。
- 住宅ローン返済額
- 変動金利の場合の金利上昇時の返済余力
- 管理費
- 現在の修繕積立金
- 将来予定されている修繕積立金
- 固定資産税・都市計画税
- 駐車場・駐輪場
- 火災・地震保険
- 専有部分の設備交換費
- 購入時の諸費用
- 売却時の諸費用
特に修繕積立金については国土交通省がガイドラインを公開しており、長期修繕計画と合わせて確認することが重要です。[参照:国土交通省「マンション管理」]
新築なら「最初の管理費・修繕積立金が安い」だけで選ばない
新築マンションを比較するとき、月々の負担を軽く見せるためかどうかにかかわらず、当初の修繕積立金が将来必要な平均額より低い段階増額方式になっているケースがあります。
そのため販売時の「ローン9万円+管理費等2万円=月11万円」だけではなく、10年後、20年後に管理費・修繕積立金がどうなる計画なのかを見る必要があります。
国土交通省は2024年のガイドライン改定で段階増額積立方式の適切な引上げ方について考え方を示し、将来にわたって安定的な修繕積立金を確保する観点からは均等積立方式が望ましいとしています。[参照:国土交通省「段階増額積立方式における適切な引上げの考え方」]
中古なら安さだけでなく「管理状態」を買う意識が重要
新築・築浅では予算が合わず中古へ広げる場合、「築年数が古いから安い」という一点だけで選ばないようにします。
同じ築25年でも、長期修繕計画に沿って工事を実施し、修繕積立金が十分あり、管理組合が機能しているマンションと、必要な修繕を先送りして積立金も不足しているマンションでは状況が大きく異なります。
国土交通省は管理組合や区分所有者を対象にマンション総合調査を定期的に実施しており、マンション管理の実態に関する資料も公開しています。[参照:国土交通省「マンションに関する統計・データ等」]
現在の賃貸に満足しているなら「買わない」ことも立派な選択
住宅購入を検討して見積もった結果、「思っていたよりずっと高い」と分かったなら、それは失敗ではありません。むしろ購入前に所有コストへ気付けたことが重要です。
現在の住居が駅近3LDKで月7万円、生活上大きな不満もなく、購入すると毎月の住居支出が大幅に増えるなら、当面賃貸を継続し、その差額を貯蓄する選択にも合理性があります。
数年後に頭金が増えたり、家族構成が固まったり、条件の良い中古物件が出たりしてから改めて購入しても構いません。住宅は「周囲が買っているから今すぐ買わなければ損」というものではありません。
逆に支出が増えても購入する価値があるケースもある
現在より住居費が増えるからといって、購入が間違いということでもありません。広い家、新しい設備、断熱性能、セキュリティ、希望する学区、長期間住み続けられる安心感などに追加費用を払う価値を感じるなら、それは合理的な消費でもあります。
例えば月7万円から月13万円へ増えたとしても、新築マンションへ住むことで生活満足度が大幅に上がり、家計にも十分な余裕があるなら、「6万円損をした」と考える必要はありません。
問題なのは、月7万円の賃貸と同程度の負担で済むと思っていたのに、実際には所有コストを含めて月13万円だったという認識のずれです。数字を把握したうえで追加費用に価値を感じるかどうかが判断基準になります。
「家賃を捨てるのが嫌」より先に考えたいこと
マンション購入の理由として「家賃がもったいない」だけを置くと、無理な予算になりやすいことがあります。それより「この地域へ少なくとも15~20年住みたい」「家族に必要な広さが決まった」「住宅ローン以外の費用を含めても余裕がある」といった条件から考えるほうが現実的です。
また頭金を出した後も生活防衛資金を残せるか、教育費や老後資金と両立できるか、金利上昇時にも返済できるかなども確認する必要があります。
金融機関から「借りられる金額」と、家計が無理なく「返せる金額」は同じではありません。購入価格を上限まで引き上げるのではなく、住居費が増えても貯蓄を継続できる水準を考えることが重要です。
まとめ:「賃貸はもったいない」ではなく総コストと残る資産で判断する
分譲マンションを購入すると、住宅ローン以外に管理費、修繕積立金、固定資産税などの負担があり、住宅ローンを完済しても管理費や修繕積立金が原則として続くという理解は正しいです。修繕積立金は将来値上げされる場合もあり、特に段階増額積立方式では増額を前提とした計画になっています。国土交通省も将来にわたる安定的な積立ての重要性を示しています。[参照:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドラインの改定」]
ただし、「購入すると賃貸の2~3倍を全部捨てる」という理解も正確ではありません。住宅ローン返済には元金返済が含まれ、返済するほどローン残高が減ります。将来売却できる価値が残っていれば、それは資産です。一方、利息、管理費、税金、保険などは所有するためのコストであり、購入価格と同額の資産が将来残る保証もありません。
反対に「家賃は完全な捨て金」という考え方にも注意が必要です。家賃によって住宅を利用でき、修繕や不動産価格下落など所有に伴うリスクの一部を負わず、比較的容易に住み替えられます。購入より賃貸の住居費が大幅に安ければ、その差額を貯蓄して別の形で資産形成することもできます。
特に駅近3LDK・築30年で家賃7万円のような条件と、新築・築浅マンションを比較する場合、支出が大幅に違うのは所有・賃貸の差だけでなく築年数の差も含まれます。まず同じ地域・駅距離・広さ・築年数の中古マンションとも比較し、それでも購入総額が高いのかを見ると判断しやすくなります。
最も大切なのは「賃貸はもったいない」という世論から結論を決めないことです。現在の家賃、購入後のローン、管理費、修繕積立金、税金、保険、修理費、購入・売却諸費用、35年後に残る不動産価値、そして賃貸を続けた場合に貯められる差額まで比較します。その結果、現在の賃貸が圧倒的に安ければ、賃貸を続けることも十分合理的です。反対に総コストを理解したうえで長期間住みたいマンションがあり、家計にも余裕があるなら、購入にも資産形成と住環境の安定という明確なメリットがあります。


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