店舗・テナントの家賃70万円は適正?築古ビルの賃料相場を調べて減額交渉する方法と借地借家法のポイント

不動産

飲食店などで長年借りている店舗・テナントについて、「駅に近いとはいえ建物が古い」「雨漏りや設備不良がある」「使えないフロアがある」「売上に対して家賃負担が重すぎる」と感じたとき、現在の賃料が本当に適正なのか疑問を持つことがあります。

しかし、店舗賃料の適正額は「築61年だから安いはず」「駅から徒歩7分だから高いはず」と一つの条件だけで決められるものではありません。立地、実際に使用できる面積、階数、視認性、エレベーターの有無、建物の状態、用途、契約内容、過去の賃料改定経緯、近隣の類似物件などを総合的に見る必要があります。

特にすでに契約中の物件では、現在募集されているテナントの「新規賃料」を単純に比較するだけでは不十分です。国土交通省の不動産鑑定評価基準でも、継続中の賃料については差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法などを関連付け、契約内容や賃料改定の経緯なども考慮して判断する考え方が示されています。[参照:国土交通省「法令・不動産鑑定評価基準等」]

したがって「70万円は高い・安い」と物件情報だけから即断するのではなく、契約書と過去の合意経緯を確認したうえで、不動産鑑定士などへ継続賃料の評価を相談するのが確実です。

  1. まず計算すると月70万円は1㎡あたり約2,583円
  2. 「駅前の坪単価が高い」だけでは適正賃料を判断できない
  3. 比較するなら「同じ駅」ではなく条件の近い物件を探す
  4. 飲食店では「面積」だけでなく売上を生める面積が重要
  5. 4階が客席として使えないなら理由を確認する
  6. 築61年だから自動的に家賃が安くなるわけではない
  7. 雨漏り・漏水・排水不良は家賃相場とは別に重要な問題
  8. 使用できない部分がある場合は民法611条も確認する
  9. 雨の日に売上が落ちることだけでは家賃減額の決定打になりにくい
  10. 借地借家法32条には「借賃増減請求権」がある
  11. 一度70万円へ戻すことを承諾した点はかなり重要
  12. 45万円は「適正家賃」だったとは限らない
  13. 70万円が適正か確かめるなら不動産鑑定士への相談が有効
  14. 継続賃料は単純な「周辺坪単価×面積」では決めない
  15. 古いビルなら「修繕履歴」を資料化する
  16. 耐震性については築年数だけで断定しない
  17. 賃料交渉では売上だけでなく「物件側の事情」を数字にする
  18. 例えばこんな比較表を作る
  19. 家賃70万円を自己判断で45万円へ戻すのは避ける
  20. 話し合いで決まらなければ賃料増減額の民事調停という方法がある
  21. 不動産鑑定士と弁護士は役割が違う
  22. 相談前に準備しておく資料
  23. 交渉するなら「70万円はおかしい」と決めつけない
  24. 「売上に対して家賃が重すぎる」なら撤退・移転も数字で比較する
  25. まとめ:家賃70万円が適正かは築年数だけでは判断できないが、客観的に再検証する価値はある

まず計算すると月70万円は1㎡あたり約2,583円

例えば実際に使用できる面積が271㎡で、月額賃料が70万円だと仮定すると、単純計算では1㎡あたり約2,583円です。

坪へ換算すると271㎡は約82坪なので、70万円÷約82坪=坪あたり約8,500円となります。45万円なら坪あたり約5,500円です。

ただし、この坪単価だけを見て高い・安いとは判断できません。店舗では1階路面部分と地下、2階、3階では一般に利用価値が同じとは限らず、複数階を一括して借りる一棟型物件では単純な坪単価比較が難しくなるからです。

「駅前の坪単価が高い」だけでは適正賃料を判断できない

テナント賃料の話し合いでよく出てくるのが「このエリアは坪単価が○万円だから、この家賃は妥当」という説明です。しかし、その数字がどの物件を基準としているのかを確認する必要があります。

例えば駅徒歩1分の築5年・1階路面店と、駅徒歩7分・築61年・地下から複数階へ分かれたエレベーターなしの物件では、同じ駅を最寄りとしていても条件が大きく異なります。単純に同じ坪単価を掛けることは適切な比較とは限りません。

国土交通省が示す賃貸事例比較法でも、単に他物件の賃料を見るだけではなく、類似事例を選び、必要な事情補正や時点修正、要因比較を行うという考え方が基本です。[参照:国土交通省「不動産の賃料を求める手法」]

比較するなら「同じ駅」ではなく条件の近い物件を探す

現在の賃料を自分で検証するときは、できるだけ条件の近い募集事例を集めます。

  • 同じ駅または近隣駅
  • 駅からの徒歩分数が近い
  • 飲食店利用が可能
  • 一棟貸しまたは複数階
  • 面積が近い
  • 築年数が近い
  • エレベーターの有無
  • 1階路面部分の広さ
  • 地下部分の有無
  • 建物設備の状態
  • 看板を出せる範囲
  • 厨房・排水・給排気設備の状態
  • 営業時間の制限

築61年と完全に一致する物件がなくても、築40年、45年、50年など比較的古い物件を複数集めることはできます。「築61年の募集物件がないから比較不能」ではありません。

むしろ一つの物件と比較するのではなく、条件の異なる複数事例を集めて、対象物件がそれらより有利なのか不利なのかを整理することが重要です。

飲食店では「面積」だけでなく売上を生める面積が重要

飲食店の賃料を考えるうえでは、契約面積が広いことと、売上を作れるスペースが広いことを分けて考える必要があります。

例えば82坪あっても、地下倉庫、厨房、階段、トイレ、廊下などが大きな割合を占め、客席が80席程度しか取れないのであれば、同じ82坪でもワンフロアで100席以上取れる店舗とは収益性が異なります。

さらに地下1階から3階まで客席が分散している場合、スタッフが料理を運ぶ動線、階段移動、人員配置なども店舗運営へ影響します。エレベーターがなければ、客だけでなく従業員の動線にも負担が生じます。

4階が客席として使えないなら理由を確認する

「4階建てなのに4階を客席として使えない」という事情がある場合、なぜ使えないのかは非常に重要です。

単に借主側が使っていないのか、契約上用途が制限されているのか、建築・消防・避難経路などの事情で客席利用できないのか、設備上営業利用に適さないのかによって意味が変わります。

契約面積には含まれているのに用途が大きく制限されている場合は、賃料を検討するときの重要な資料になり得ます。契約書、重要事項説明書、平面図、確認できる行政上の資料などを整理しておきましょう。

築61年だから自動的に家賃が安くなるわけではない

築年数が61年という事実だけで「家賃70万円は高すぎる」と法律上決まるわけではありません。店舗不動産では築古でも、繁華街の一等地、角地、視認性の高い路面、希少な大型区画などで高い賃料が成立する場合があります。

反対に、駅に近くても、老朽化、階段のみ、設備能力不足、使いにくい間取り、地下部分の湿気、漏水、給排水の問題などがある物件は、同じエリアの新しいビルと同条件では比較できません。

つまり「築61年」そのものより、築年数によって実際にどのような機能・収益性の低下が生じているかを具体化することが大切です。

雨漏り・漏水・排水不良は家賃相場とは別に重要な問題

2階の厨房付近から1階客席へ水が落ちる、地下倉庫へ水が垂れる、排水の流れが悪いといった症状があるなら、これは単なる「古い建物だから仕方ない」で済ませるのではなく、賃貸借契約上の修繕問題として確認する必要があります。

民法606条では、原則として賃貸人は賃貸物の使用・収益に必要な修繕をする義務を負うと定めています。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によって修繕が必要になった場合は別です。[参照:e-Gov法令検索「民法」第606条]

店舗では契約書で設備や修繕の負担区分について特約が設けられていることも多いため、「漏水=必ず大家負担」と即断せず、契約書と漏水原因を確認する必要があります。

使用できない部分がある場合は民法611条も確認する

民法611条では、賃借物の一部が滅失その他の事由によって使用・収益できなくなり、それが賃借人の責めに帰することができない事由による場合、その使用・収益できなくなった部分の割合に応じて賃料が減額されると規定されています。[参照:e-Gov法令検索「民法」第611条]

ただし、「4階を客席にしていない」「地下に漏水がある」といった事実だけから、直ちに何%減額されると決められるわけではありません。契約上予定されていた用途、使用不能の原因、範囲、期間、借主側の責任の有無などを確認する必要があります。

国土交通省の資料でも、一部使用不能の場合の減額割合には明確な一律基準があるわけではなく、貸主と借主が減額の程度や期間などを協議することが望ましいと説明されています。[参照:国土交通省「賃借物の一部使用不能による賃料の減額について」]

雨の日に売上が落ちることだけでは家賃減額の決定打になりにくい

飲食店経営では「雨の日に人通りが減る」「梅雨時期の売上が悪い」という事情は非常に切実です。ただし、それだけで賃料が当然に下がるわけではありません。

借地借家法32条が挙げているのは、土地・建物に対する租税その他の負担の増減、土地・建物価格の上昇・低下その他の経済事情の変動、近傍同種建物の賃料との比較などによって借賃が不相当となった場合です。[参照:e-Gov法令検索「借地借家法」第32条]

店舗の収益性は賃料を検討する材料になり得ますが、「自店の売上が低いから家賃も下がる」という単純な関係ではありません。経営努力による売上差と、物件自体の収益力・市場価値の問題を分けて考える必要があります。

借地借家法32条には「借賃増減請求権」がある

一般的な建物賃貸借では、現在の家賃が経済事情や近隣の同種建物の賃料などと比較して不相当となった場合、借地借家法32条に基づいて将来に向かって賃料の増額または減額を請求できる場合があります。[参照:e-Gov法令検索「借地借家法」第32条]

これは貸主だけの権利ではありません。条件を満たせば借主側からも減額を求めることができます。

ただし、契約の種類や賃料改定に関する特約によって扱いが変わる場合があります。特に定期建物賃貸借などでは契約内容を慎重に確認する必要があるため、実際に法的な減額請求をする前には契約書を弁護士へ確認してもらうのが安全です。

一度70万円へ戻すことを承諾した点はかなり重要

コロナ禍に70万円から45万円へ下げてもらい、その後、貸主から70万円へ戻すよう求められて借主側も承諾したという経緯がある場合、ここは非常に重要なポイントです。

不動産鑑定評価基準では継続賃料を評価するとき、現在の市場相場だけでなく、契約の内容、契約締結の経緯、賃料改定の経緯などを総合的に勘案するとされています。[参照:国土交通省「継続賃料に係る鑑定評価手法」]

したがって、70万円への復額を最近明確に合意したのであれば、その合意は今後の賃料減額交渉でも無視できません。「昔から70万円だったが最近初めて疑問を持った」という場合と、「最近45万円から70万円へ戻すことに双方が合意した」という場合では、法的・鑑定評価上の事情が異なります。

45万円は「適正家賃」だったとは限らない

ここも誤解しやすいところです。コロナ禍に70万円から45万円へ減額されたからといって、「本来の適正賃料が45万円だった」とは限りません。

コロナ禍の営業困難を考慮した一時的な減免措置として45万円になっていたのであれば、それは市場賃料を再評価して決めた金額ではなく、貸主による一時的な救済だった可能性があります。

当時交わした覚書、メール、LINE、書面などに「コロナ期間中のみ」「○年○月まで」「状況が改善したら元の賃料へ戻す」といった記載がないか確認してください。70万円と45万円のどちらが適正なのかを考える前に、45万円が何を意味する金額だったのかを整理する必要があります。

70万円が適正か確かめるなら不動産鑑定士への相談が有効

不動産会社が「このエリアは坪単価が上がっている」と説明すること自体がおかしいわけではありません。不動産会社は日常的に募集賃料や成約状況を扱っているため、有用な市場情報を持っている場合があります。

ただし、貸主側が連れてきた不動産会社の口頭説明と、第三者である不動産鑑定士が資料を収集して行う鑑定評価は同じものではありません。

国土交通省は、不動産鑑定士が鑑定評価を行う際の統一的な基準として「不動産鑑定評価基準」を定めています。[参照:国土交通省「不動産鑑定評価基準等」]

継続賃料は単純な「周辺坪単価×面積」では決めない

国土交通省が整理している継続賃料の評価には、主に差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法があります。[参照:国土交通省「継続賃料に係る鑑定評価手法」]

手法 基本的な考え方
差額配分法 適正な賃料と実際の賃料との差額を、契約経緯なども考慮して配分する
利回り法 不動産価格、継続賃料利回り、必要経費などから算定する
スライド法 直近の合意賃料を基準に、その後の経済事情などの変化を反映する
賃貸事例比較法 類似する継続賃料の事例と比較して算定する

国土交通省の資料でも、賃料改定のケースではこれら複数の考え方が示されています。[参照:国土交通省「不動産の賃料を求める手法」]

このため「周辺店舗が坪1万円だから82坪×1万円=82万円。70万円は安い」という程度の計算だけで、継続賃料の適正額が決まるわけではありません。

古いビルなら「修繕履歴」を資料化する

築年数がかなり経過していて漏水や排水不良などがあるなら、口頭で「建物がボロボロです」と伝えるより、客観的な資料を作ることが重要です。

  • 漏水箇所の写真・動画
  • 発生した年月日
  • 営業への影響
  • 修理業者の見積書
  • 過去に貸主へ通知したメールや書面
  • 排水トラブルの記録
  • 使用できない場所の平面図
  • 設備故障の履歴
  • 貸主側が修理した履歴

特に水漏れについては発生源が重要です。建物本体や共用配管に原因があるのか、借主が設置した厨房設備や配管に原因があるのかで責任関係が変わります。

ガムテープなどによる応急処置だけで長期間使っている箇所があるなら、写真を撮り、専門業者に原因を確認してもらうほうがよいでしょう。

耐震性については築年数だけで断定しない

築61年で耐震改修が確認できない場合、安全性について不安を感じるのは自然ですが、「築61年=耐震性がなく危険」と一律に断定することはできません。

建築時期、構造、過去の増改築、耐震診断、耐震改修の履歴などを確認する必要があります。賃料交渉でも「古いから危険」と主張するより、耐震診断の有無や改修履歴など客観的な資料を確認するほうが有効です。

建物所有者へ耐震診断・改修履歴の資料があるか問い合わせ、必要なら建築士などの専門家へ相談するとよいでしょう。

賃料交渉では売上だけでなく「物件側の事情」を数字にする

貸主へ「売上が厳しいので45万円へ戻してください」とだけ伝えると、単なる経営上のお願いとして受け取られやすくなります。

より説得力を持たせるなら、「周辺類似物件5件の坪単価」「対象物件の実効利用面積」「築年数」「駅距離」「エレベーターなし」「使用制限のあるフロア」「漏水・排水設備の状態」など、物件そのものに関する資料を整理します。

そのうえで不動産鑑定士の意見や査定資料を添えて「70万円から○万円への改定を希望する」と具体的に提案するほうが建設的です。

例えばこんな比較表を作る

項目 対象店舗 比較物件A 比較物件B
駅徒歩 7分 3分 8分
築年数 約61年 20年 40年
面積 約271㎡ 250㎡ 280㎡
階層 地下~複数階 1~2階 1階
エレベーター なし あり
飲食可
月額賃料 70万円 調査 調査
坪単価 約8,500円 計算 計算

実際には保証金、共益費、礼金、更新料なども異なるため、月額賃料だけでなく実質的な負担額を比較します。

また募集賃料は「貸主が希望している価格」であり、実際に契約された成約賃料とは限りません。この点も不動産鑑定士や地域の事業用不動産に詳しい専門家へ確認するメリットです。

家賃70万円を自己判断で45万円へ戻すのは避ける

現在70万円を支払う合意が成立している状態で、「高すぎると思うから来月から45万円しか払わない」と自己判断するのは避けたほうが安全です。

借地借家法32条には賃料増減請求の仕組みがありますが、実際の契約条件やこれまでの合意、減額請求の意思表示、相当と考える賃料などが問題になります。賃料をめぐって争いが生じた場合、支払方法を誤ると賃料不払いをめぐる別のトラブルへ発展する可能性があります。[参照:e-Gov法令検索「借地借家法」第32条]

実際に支払額を変更する前に、店舗賃貸借と賃料増減請求に詳しい弁護士へ契約書を持参して相談するのが安全です。

話し合いで決まらなければ賃料増減額の民事調停という方法がある

賃料減額について貸主と借主の協議がまとまらない場合、裁判所の民事調停を利用する方法があります。裁判所は「賃料増減額」の申立書も公開しています。[参照:裁判所「民事調停で使う書式」]

さらに民事調停法24条の2では、借地借家法32条に基づく建物賃料の増減請求について訴訟を提起しようとする場合、原則としてまず調停を申し立てる「調停前置」が定められています。[参照:e-Gov法令検索「民事調停法」第24条の2]

いきなり裁判で争うことだけを考える必要はありません。まず資料を集め、専門家を交えた交渉、それでも難しければ調停という段階を踏む方法があります。

不動産鑑定士と弁護士は役割が違う

今回のような問題では「不動産会社、不動産鑑定士、弁護士の誰へ相談すればよいのか」と迷いやすいところです。それぞれ役割が違います。

専門家 主な役割
事業用不動産会社 周辺の募集物件や店舗市場の情報収集
不動産鑑定士 対象物件の経済価値や適正な継続賃料を専門的に評価
弁護士 契約書の解釈、減額請求、修繕問題、交渉・調停・訴訟など法律面を担当
建築士・設備業者 漏水、排水、建物・設備の状態など技術面を確認

家賃70万円が適正なのかを客観的に検討したいなら不動産鑑定士、実際に減額請求を行うか、漏水・修繕義務をどう扱うかまで考えるなら弁護士への相談が適しています。

金額が月70万円であれば年間賃料は840万円になります。仮に月10万円の差でも年間120万円になるため、専門家費用を払ってでも一度きちんと検証する経済的意味はあります。

相談前に準備しておく資料

専門家へ相談する場合、最初から資料を整理しておくと判断が早くなります。

  • 現在の賃貸借契約書
  • 更新契約書・覚書
  • 70万円から45万円へ変更したときの書面
  • 45万円から70万円へ戻したときの書面・メール・メッセージ
  • 重要事項説明書
  • 建物図面・各階平面図
  • 契約面積と実際に使用可能な面積
  • 漏水・排水不良の写真と動画
  • 貸主へ修繕を依頼した記録
  • 修理見積書
  • 周辺の類似店舗募集資料
  • 過去数年の賃料推移
  • 固定資産税等について貸主から示された資料があればその資料

特に「70万円へ戻すことを承諾した」という部分は、口頭だったのか書面だったのか、いつ合意したのか、その際どのような説明を受けたのかまで時系列にしておきます。

不動産会社から「この地域の坪単価が高騰している」と説明されたのであれば、可能ならその根拠となった比較物件や資料を貸主側へ提示してもらうのも一つの方法です。

交渉するなら「70万円はおかしい」と決めつけない

貸主との関係を維持しながら営業を続けたい場合、最初から「70万円はぼったくりだ」「築61年なのにあり得ない」と対立的に主張するのは得策ではありません。

例えば「70万円への復額には一度合意したものの、建物の使用状況や修繕問題を改めて確認したところ経営上の負担が大きく、適正な継続賃料を第三者にも確認したい。資料を基に改めて協議したい」という進め方なら、論点を感情ではなく数字へ移せます。

最終的には45万円へ戻すことだけが解決策とは限りません。60万円、55万円などへの減額、一定期間の減免、修繕費の貸主負担、段階的な賃料設定など、双方が合意できる条件を探す方法もあります。

「売上に対して家賃が重すぎる」なら撤退・移転も数字で比較する

賃料交渉と同時に、経営判断として現在地へ残る場合と移転する場合の費用を比較することも大切です。

例えば月70万円から50万円へ下がれば年間240万円の改善です。一方、新店舗へ移転すれば保証金、内装工事、厨房設備、原状回復、引っ越し、休業期間などで数百万円から大きな金額が必要になることがあります。

反対に現在の建物で漏水・設備問題が繰り返され、売上を増やせる余地も少ないなら、家賃が多少下がっても長期的には移転したほうが合理的な場合があります。賃料だけでなく5年程度の総コストで比較すると判断しやすくなります。

まとめ:家賃70万円が適正かは築年数だけでは判断できないが、客観的に再検証する価値はある

築61年、駅徒歩約7分、約271㎡、複数階、エレベーターなし、一部フロアの用途制限、漏水や排水などの問題がある店舗で月70万円という条件について、物件所在地を特定せずに「高すぎる」「相場どおり」と断定することはできません。単純計算では271㎡を約82坪として坪あたり約8,500円ですが、店舗賃料は坪単価だけでは判断できないからです。

一方で、貸主側の不動産会社から「この駅周辺の坪単価が上がっている」と口頭で説明されたことだけをもって、70万円が客観的な適正継続賃料であると確定するわけでもありません。国土交通省の不動産鑑定評価基準では、継続賃料について差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法などを関連付け、契約内容、賃料改定の経緯、類似不動産の賃料などを総合的に考慮します。[参照:国土交通省「継続賃料に係る鑑定評価手法」]

特に注意したいのは、コロナ禍の45万円が一時的な減免だった可能性と、その後70万円へ戻すことを借主側も承諾している点です。直近の賃料合意や改定経緯は継続賃料を検討する際の重要な事情になるため、「45万円だった時期があるから45万円が適正」と単純には言えません。

その一方、漏水、排水不良、使用できない部分などは別の重要な論点です。民法606条には賃貸人の修繕義務に関する規定があり、611条には借主の責任ではない事情によって一部を使用・収益できなくなった場合の賃料減額に関する規定があります。[参照:e-Gov法令検索「民法」] ただし店舗賃貸借では修繕負担などの特約が設けられていることもあるため、契約書の確認が不可欠です。

現実的な第一歩は、契約書、45万円への減額と70万円への復額の経緯、各階図面、使用不能部分、漏水・排水不良の記録、近隣類似物件を整理し、借主側で独立した不動産鑑定士へ継続賃料について相談することです。同時に、店舗賃貸借に詳しい弁護士へ契約書を確認してもらえば、借地借家法32条による賃料減額請求や修繕問題を含めて選択肢を整理できます。借地借家法32条は、一定の場合に貸主だけでなく借主からも将来に向かって借賃の減額を請求できる仕組みを定めています。[参照:e-Gov法令検索「借地借家法」第32条]

話し合いで解決できなければ、賃料増減額について民事調停を利用する制度もあります。賃料増減請求の訴訟は原則として調停を先に行う仕組みになっています。[参照:e-Gov法令検索「民事調停法」第24条の2] 月70万円、年間840万円という規模の契約であれば、感覚だけで払い続けるか自己判断で減額するのではなく、第三者の専門家に「この物件の現在の適正な継続賃料はいくらなのか」を一度数字で評価してもらうことが、今後の交渉や店舗経営を判断するうえで有効です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました