不動産の売買では、売主と買主が合意すれば自由に価格を決められるのが原則です。しかし、相場とかけ離れた低額で不動産を譲渡した場合、税務上は単なる売買ではなく贈与とみなされる可能性があります。特に空き家や老朽化した住宅など、市場価値が不明確な不動産では「いくらなら問題ないのか」と疑問に思う人も少なくありません。この記事では、不動産売買における「著しく低い価額」の考え方や、税務署がどのような視点で判断するのかを解説します。
「著しく低い価額」とは何を意味するのか
税法上の「著しく低い価額」には全国共通の明確な金額基準が定められているわけではありません。
重要なのは固定資産税評価額ではなく、その不動産の実際の経済的価値、つまり時価との比較です。
例えば固定資産税評価額が150万円であっても、実際には買い手が見つからず市場価値がほとんどない物件も存在します。逆に評価額が低くても立地条件などにより高値で取引されるケースもあります。
そのため税務上は「評価額の何割なら安全」といった単純な判断はできません。
税務署はどのように時価を判断するのか
税務署が低額譲渡を検討する際は、周辺取引事例や不動産鑑定評価、固定資産税評価額、公示価格、路線価など複数の資料を参考にして時価を判断します。
特に親族間取引では、形式上は売買であっても実質的には財産移転であるとして厳しく確認される傾向があります。
一方で、第三者間取引であり、長期間売却活動を行っても買い手が見つからなかった事実などがあれば、低額売買であっても市場実態に沿った価格と評価される可能性があります。
| 判断材料 | 確認される内容 |
|---|---|
| 周辺相場 | 近隣の類似物件の取引価格 |
| 売却履歴 | 売り出し期間や値下げ経緯 |
| 物件状況 | 老朽化、雨漏り、再建築可否など |
| 当事者関係 | 親族間か第三者間か |
空き家や古家の場合は市場価格が極端に低くなることもある
地方の人口減少地域や、いわゆるオールドタウンと呼ばれる地域では、建物の価値がほぼゼロと評価されることがあります。
築40年以上の住宅で大規模修繕が必要な場合、解体費用の方が高くなるケースも珍しくありません。
例えば固定資産税評価額が150万円であっても、買主がリフォーム費用として数百万円を負担しなければ居住できない状態であれば、実際の取引価格が数十万円になることもあります。
このような場合、低価格で売買されたからといって直ちに「著しく低い価額」と判断されるわけではありません。
低額譲渡とみなされるリスクを減らす方法
税務上のトラブルを避けるためには、売買価格の根拠を残しておくことが重要です。
不動産会社による査定書や、実際の売却活動記録、購入希望者との交渉履歴などがあると、市場価格に基づく売買であることを説明しやすくなります。
また、建物の老朽化状況を写真や報告書で残しておくことも有効です。
価格が安いこと自体よりも、その価格に合理的な根拠があるかどうかが重要なポイントです。
固定資産税評価額だけで価格を決めるのは危険
固定資産税評価額は課税のための基準であり、必ずしも売買価格を示すものではありません。
そのため、評価額150万円の建物だから150万円で売れるとは限らず、逆に10万円や20万円でしか買い手が見つからないケースもあります。
実務上は市場価格を把握するために、不動産会社の査定や周辺取引事例を確認することが望ましいでしょう。
国税庁の贈与税や譲渡所得に関する考え方については[参照]も参考になります。
まとめ
不動産売買における「著しく低い価額」には一律の金額基準があるわけではなく、時価との比較によって判断されます。
固定資産税評価額と売買価格の差だけで判断されるのではなく、その地域の市場実態や物件状態、売却経緯などが総合的に考慮されます。
特に老朽化した空き家では市場価値が大幅に低下していることもあるため、価格の根拠を客観的に説明できる資料を残しておくことが重要です。適正な記録を残しておけば、低価格での売買であっても税務上のリスクを軽減しやすくなります。


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