地震対策として注目されている「免震構造」には、さまざまな技術が存在します。その中でも、セミアクティブ免震とアクティブ免震は、高度な制御技術を用いた最新の免震技術です。
本記事では、それぞれの仕組みや特徴について詳しく解説します。
① 免震構造とは?
免震構造とは、建物の基礎部分に免震装置を設置し、地震の揺れを建物に伝わりにくくする技術です。一般的な免震構造は、ゴムやダンパーを用いた「パッシブ免震」と呼ばれ、外部からのエネルギー供給なしで機能します。
しかし、近年では地震動に応じて制御できるセミアクティブ免震やアクティブ免震が登場し、より高い耐震性能を実現しています。
② セミアクティブ免震とは?
セミアクティブ免震は、主にパッシブ免震(ゴムやダンパーを利用した従来の免震技術)に加えて、外部からの制御によって免震装置の特性を調整できるシステムです。
1. セミアクティブ免震の仕組み
この技術では、以下のような要素が含まれます。
- 可変ダンパー:地震の揺れに応じて、減衰力を調整できる。
- 制御装置:リアルタイムで地震動を解析し、ダンパーの動作を最適化。
2. セミアクティブ免震の特徴
・エネルギー消費が少なく、非常時でも動作可能:電源が途絶えても、基本的な免震機能は維持される。
・パッシブ免震とアクティブ免震の中間的な技術:シンプルな構造ながら、より高度な免震性能を発揮。
・メンテナンスコストが比較的低い:アクティブ免震ほど複雑な機構を持たないため、運用コストが抑えられる。
③ アクティブ免震とは?
アクティブ免震は、地震動をリアルタイムで検知し、建物の揺れを積極的に抑制するシステムです。
1. アクティブ免震の仕組み
アクティブ免震では、以下のような技術が使われます。
- 加速度センサー:地震の揺れを瞬時に検知し、コンピューターに送信。
- アクチュエーター(駆動装置):揺れを打ち消すように、瞬時に建物を動かす。
2. アクティブ免震の特徴
・瞬時の制御が可能:揺れを感知してからミリ秒単位で制御を行う。
・パッシブ免震では対応できない振動にも有効:例えば、超高層ビルの長周期地震動にも対応可能。
・電源が必要:制御装置やアクチュエーターが動作するため、停電時には機能が制限されることがある。
④ セミアクティブ免震とアクティブ免震の違い
両者の主な違いを表にまとめると、以下のようになります。
項目 | セミアクティブ免震 | アクティブ免震 |
---|---|---|
エネルギー供給 | 最小限の電力で動作 | 外部電源が必須 |
制御の種類 | 免震装置の特性を調整 | 揺れを打ち消す動作 |
対応できる振動 | 通常の地震動 | 長周期地震動にも対応 |
コスト | 比較的低コスト | 高コスト |
⑤ どちらの免震が優れているのか?
どちらの免震技術が適しているかは、建物の用途や立地条件によります。
セミアクティブ免震が向いている建物
- 一般的な住宅
- 中低層のオフィスビル
- コストを抑えつつ、免震性能を向上させたい建物
アクティブ免震が向いている建物
- 超高層ビル
- 病院など、揺れが許されない建物
- 高価でも最高の免震性能を求める建物
まとめ
セミアクティブ免震とアクティブ免震は、いずれも最新の免震技術ですが、それぞれ異なる特徴を持っています。
- セミアクティブ免震:パッシブ免震をベースに、少ないエネルギーで制御機能を付加。コストを抑えつつ効果を高めたい場合に最適。
- アクティブ免震:リアルタイム制御で揺れを最小限に抑えるが、電源が必要で高コスト。高層ビルや重要施設向け。
建物の種類や用途に応じて適切な免震技術を選択し、地震に強い構造を構築することが重要です。
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