不動産売買において、購入希望者が複数いる場合によく使われる表現が「1番手」と「2番手」です。売主がどのような基準で契約相手を選ぶのか、また2番手の条件を確認してから決定してよいのかなど、実際の取引現場では誤解の多い部分です。本記事では、不動産契約における優先順位の考え方と売主側の判断基準について解説します。
1. 1番手・2番手とは何か?
不動産取引でいう「1番手」とは、最初に購入申込書を提出し、売主に購入意思を示した買主を指します。これに対して「2番手」とは、1番手の申込者が契約に至らなかった場合に、次に契約の機会が与えられる候補者です。つまり、1番手に優先権があり、2番手はあくまで補欠的な立場です。
2. 売主が2番手の条件を確認するのは問題か?
結論から言うと、売主が2番手の条件を確認すること自体は違法ではありません。売主には自由に売買相手を選ぶ権利があるため、より好条件の買主を選ぶことが可能です。ただし、すでに1番手と合意が進んでいる段階(契約書作成・日程調整など)で2番手を優先する場合は、トラブルの原因になることがあります。
例えば、1番手の買主に「契約を前提に調整中です」と伝えた後に、より高い価格を提示した2番手に乗り換えると、「信義則違反」としてクレームや訴訟に発展する可能性もあります。
3. 一般的な不動産取引の流れと確認手順
通常の取引では、まず1番手の買主に対して契約の意思確認を行います。その際に、ローン審査が通らない、契約日時が合わないなどの理由で契約が難しい場合にのみ、2番手に声をかける流れが一般的です。不動産会社もこの順序を守ることで、トラブルを防止しています。
4. 売主が注意すべきポイント
売主としては、2番手の条件を知ること自体は交渉材料になり得ますが、それをもって1番手との約束を破棄するのはリスクがあります。特に仲介業者を通じた場合、業者が双方の信頼を損なうことになるため、慎重な対応が求められます。
どうしても条件の良い2番手と契約したい場合は、1番手との交渉が完全に白紙になった後に、新たな申込として進めるのが安全です。
5. 買主側ができる対策
買主としては、1番手であっても契約が成立するまでは確定ではないことを理解しておく必要があります。売主が他の申込を比較している可能性もあるため、購入意思を明確にし、手付金の準備や契約日程の調整を早めに進めることが重要です。2番手の立場の場合も、キャンセル発生時にすぐ対応できるよう準備しておくと良いでしょう。
6. まとめ
不動産売買における1番手・2番手の取り扱いは、法律上明確なルールがあるわけではなく、商慣習と信義則に基づくものです。売主は自由に契約相手を選べますが、誠実な対応を心がけることがトラブル防止につながります。1番手との契約が確定するまでは慎重に進め、透明性のある取引を意識することが大切です。


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