防音性の高いマンションは本当に売れる?壁厚と騒音トラブルの現実と購入者のニーズを読み解く

中古マンション

近年、マンション購入者の間で「音に対するストレス」が大きな関心事となっています。特にファミリー層や在宅ワーカーの増加に伴い、「壁が薄い」「隣の生活音が聞こえる」など、騒音トラブルに悩まされる人が少なくありません。

では、「完全防音」に近いレベルの防音性能を備えたマンションを建てれば、より高い人気と売上が見込めるのでしょうか?本記事では、壁の厚さと防音性、そして実際の市場ニーズに基づいて、その可能性を検証していきます。

一般的なマンションの壁厚と防音性能の関係

日本の分譲マンションにおける一般的な壁厚は、以下の通りです。

  • 戸境壁(隣との壁):約150〜180mmが平均
  • 外壁:約150〜200mm
  • 間仕切り壁(部屋内の壁):約90〜120mm

これらはコンクリートやALC(軽量気泡コンクリート)で構成されており、厚みが増すほど防音性は上がる傾向にあります。特に200mmを超える戸境壁を採用している物件は「ハイグレード仕様」として差別化されることも。

ただし、防音性能は壁厚だけでなく、「遮音等級(D値やL値)」や「開口部の防音対策」「床スラブ厚」「給排水管の処理」など複合的に決まります。

購入者の防音ニーズは確実に高まっている

最近では、以下のような背景から「音の静けさ」を重視する人が増えています。

  • テレワーク・在宅勤務の普及
  • 小さな子どもがいる世帯の増加
  • 高齢者の昼夜逆転生活
  • 騒音トラブルのネット投稿による心理的警戒

大手不動産ポータルの調査でも、「購入時に重視する要素」として「遮音性」「騒音トラブルの回避」が常に上位にランクインしており、“静かな住環境は売れるマンションの条件”になりつつあります。

完全防音仕様は現実的に可能か?

現代の建築技術で「スタジオ並み」の防音性を住宅に取り入れることは可能ですが、コストが大きな課題です。

完全防音に近づけるには:

  • 戸境壁を鉄筋コンクリートで200mm以上
  • 床スラブ厚250mm+遮音マット
  • 二重サッシ+樹脂サッシ
  • 給排水管を壁内防音仕様に

このような仕様は、一戸あたり建築コストが50〜150万円以上上がると言われています。

結果として、販売価格にも反映されるため、立地やブランド力とのバランスが取れなければ売れ残るリスクも考慮しなければなりません。

防音性を強みにしたマンションの実例

三井不動産「パークホームズ」シリーズの一部
戸境壁200mm+二重床・二重天井構造を採用し、防音性を強調。ファミリー層に高評価。

高級賃貸「ザ・パークハウス」シリーズ
楽器演奏可能な仕様で設計されている物件もあり、音楽関係者に人気。

音楽マンション(専門設計)
壁厚300mm+防振遮音構造を採用。価格は通常の2割増だが、ニッチな層に根強い需要。

壁を厚くして防音を強化することのメリット・デメリット

メリット:

  • 入居後のクレームが減る
  • 資産価値が維持されやすい
  • 差別化ポイントになる

デメリット:

  • 建築コストが高騰
  • 販売価格に跳ね返る
  • 建築面積が若干減る場合も

結論として、防音性をウリにしたマンションは確実に需要があり、「騒音に敏感な層」には強く刺さる商品です。ただし価格とのバランスやターゲット層を明確にすることが前提となります。

まとめ

「壁が厚くて防音性が高いマンション=売れる」と断言することはできませんが、騒音トラブルの少なさ=顧客満足度の高さであることは明らかです。

今後のマンション開発では、立地・価格・間取りに加えて『静音性能』が新たな差別化要素として注目されていくでしょう。マンション選びや投資物件の評価において、「防音性能」は確実に見逃せないポイントとなっています。

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