自宅の購入を検討し、内覧やローン仮審査まで進めたにも関わらず、突然売主側の事情で売却がキャンセルされると、大きなショックを受けるものです。「売買契約前なのにキャンセルできるのか?」「違約金や損害賠償の請求はできるのか?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、売主側の一方的なキャンセルが法的に許されるのか、違約金の請求が可能かどうかについて解説します。
① 売主が売却をキャンセルできるタイミングとは?
売主が売却をキャンセルできるかどうかは、どの段階まで手続きが進んでいたかによります。
1. 売買契約前の場合
売買契約が正式に締結されていない場合、売主は自由に売却をキャンセルできます。予約や内覧、ローンの仮審査だけでは、売買契約の成立には至っていません。
このため、売主側が「やはり売るのをやめたい」と判断した場合、法的にはキャンセルが認められてしまうのが現状です。
2. 売買契約後の場合
売買契約が正式に締結された後で売主がキャンセルする場合、契約違反(債務不履行)となり、違約金や損害賠償を請求できる可能性があります。
契約書には、通常「売主都合で契約を解除した場合は、手付金の2倍を支払う」などの違約条項が記載されています。売買契約が成立しているなら、これに基づいて請求できます。
② 売買契約前にキャンセルされた場合の対処法
売買契約前にキャンセルされた場合、基本的には法的に請求できるものはほとんどありません。しかし、仲介会社の対応次第では交渉できる可能性があります。
1. 仲介会社の責任を問う
仲介会社が売主の意思をしっかり確認せずに販売活動を進めた場合、「業務上の過失」として責任を追及できる可能性があります。
例えば、
- 売主が売る意思を確定していなかったにも関わらず、仲介会社が内覧を実施した
- ローン審査を進めさせる前に、売却の確実性を確認していなかった
このような場合は、仲介会社に対し、時間や労力に対する補償を求める交渉が可能です。
2. 精神的・金銭的負担を理由に売主へ交渉
売主が「売らない」と決めた以上、法的には強制できませんが、交渉によって何らかの補償を求めることはできます。
例えば、
- 仮審査の手続きにかかった時間や手数料の負担
- 別の物件探しのためのサポート
これらについて売主や仲介会社と話し合うことで、多少の補償や対応を引き出せることがあります。
③ 売主都合のキャンセルが防げるケースとは?
今後、同じような状況を避けるために、事前にできる対策を知っておきましょう。
1. 「買付証明書」を提出する
買付証明書(購入申込書)を提出し、売主の売却意思を確認することで、突然のキャンセルを防ぐことができます。
- 「この金額で購入する意思がある」と明確に伝える
- 売主に「本当に売るつもりがあるか」を確認する
ただし、買付証明書には法的拘束力がないため、絶対に売却が確定するわけではありません。
2. 契約前の「覚書」を交わす
売主と購入予定者の間で「仮契約」のような形で覚書を交わし、売主のキャンセルに対して一定のペナルティを設定する方法もあります。
たとえば、
- 「売主都合でキャンセルする場合、買主の負担した費用を補償する」
- 「契約前でも、売主が理由なくキャンセルする場合は違約金を支払う」
といった内容を盛り込むことが可能です。
まとめ:売主の売却キャンセルは法的にどうなる?
売主が一方的に売却を取りやめるケースは、売買契約が締結されているかどうかで対応が変わります。
- 売買契約前のキャンセル:基本的に売主の自由。法的に違約金請求は難しい
- 売買契約後のキャンセル:違約金や損害賠償を請求できる可能性あり
売買契約前にキャンセルされた場合は、仲介会社の責任を問う、売主に交渉するなどの方法を試しましょう。
今後、同様のトラブルを防ぐためには、買付証明書や仮契約の覚書を活用し、売主の売却意思を事前に確認することが重要です。
物件購入の際は、売主の売却意思が本当に固まっているかどうかを見極めることを心がけましょう。
コメント